五月の静寂


 
5月の連休(ゴールデンウィーク)もあっという間に過ぎ去った。
毎年思うことだが、この時期、つまり、連休明けから梅雨に入る時分は、一年のうち最も静かな時期に思える。
気候も温暖で、まだ田植えの時期ではない。連休ボケで仕事にも今一つ力が入らない。「五月病」にかかるのもこの時期だ。
一年は、もちろんお正月から始まるんだが、1月中旬のセンター試験を皮切りに受験シーズンに突入する。
受験生だけの問題なんだが、日本の場合そういうわけにはいかない。受験生を抱える家族はもちろん、孫や親戚にいても気にかかるし、国中の関心が集中する。
梅が咲き出せば、やれどこそこの梅がこうだとか、今年は遅い、いや今年は早い、花好きの連中が騒ぎだす。
そうこうしているうちに、さくら情報が全国各地から届き始めるし、中学、高校、大学の合格発表も一段落して、子や孫や親戚の卒業式があったり、進学、入社の準備に忙しい。
4月は実質一年の始まりだ。ランドセルを背負い、制服に身を固め、新しい職場に向かい、慣れない事初めに緊張の連続だ。
その緒に就き始めた時に5月の連休がやってくる。連休なんだから、休めばいいようなもんだが、そうもいかないのが国民性だ。
今年で言えば、4月の28日あたりから、道という道、新幹線、飛行機、あらゆる交通機関が満杯だし、テレビでは大型連休の始まりを盛んに報道するし、家でゆっくりしていたら取り残されそうな気分になる。
そして5月5日あたりから帰省ラッシュ。リフレッシュできて晴れやかな顔があるかと思えば、子連れで疲れ切った若夫婦の顔もある。
ということで、この連休明けは一年前半の一区切りということで、これから迎える暑い暑い夏を乗り切るためにも、また、学業や仕事に本格的に取り組んでいくためににも、お百姓なら梅雨を迎えての田植えに備えるためにも、ふーっと一息、深呼吸でもしたくなるのがこの時期だ。
国中全体がいわばスタンバイ状態になるということだろう。だから一年でいちばん静かな時期になると思うのだが、どうだろう。
つつじが咲き、さつきが咲き、チュリップ、ラベンダー、パンジー、そしてバラ、どこに出かけてもその先々で見かける花も多い。しかし、そのどれとて、あの桜のような国中挙げての大騒ぎはない。
近くの関空に出かけても、いつものように5分に一回、飛び立つ飛行機、着陸態勢に入る飛行機、どれもが音もなく発着する。
海辺には人影もなく、遥か彼方に大きな船影が霞の中に消えていく。目の前を通り過ぎて行く小さな漁船のエンジン音だけが微かに聞こえ、打ち寄せる波音の方が大きい。
まさしく、五月の静寂だ。







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