日本と日本人

 
9月28日に衆議院が解散され、10月22日の投票に向け選挙戦の真っ最中だ。呑気なもんだ。予測不能のトランプ大統領と、統制不能の金正恩・朝鮮労働党委員長によっていつ戦争になってもおかしくない切迫した状況下での解散総選挙である。大義名分があっての解散ではなく、今ここで解散を打てば、この先の解散よりもダメージが少なくて済むという打算に基づいた、まったく国内事情、それも安倍政権及び自民党の党利党略だけの解散総選挙なのである。野党も野党。都議選で大勝利した「都民ファーストの会」を率いる小池知事が国政への野望をむき出しにするかと思えば、これに便乗して、崩壊寸前の「民進党」が主義主張を放り投げて「希望の党」に転げ込んだはいいが、いわゆる「排除」のための「踏み絵」でばらばらに解体。暴言を振りまいても立候補。不倫にまみれても立候補。金銭をちょろまかしても立候補。すべて選挙に出て勝たんがため、当選せんがための党利党略、がりがり亡者に自己保全。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に出てくるカンダタ(犍陀多)さながらの世界である。世界はこんな日本をどう見ているだろうか。ロシアのプーチンが動き、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相、中立国のスイス大統領ドリス・ロイトハルトまでが仲裁に乗り出そうとしている今の世界情勢との落差はあまりにも大きい。
日本はいつもそうだが、このようにとんでもない指導者、場合によっては無知無能な指導者を頭に抱いていても、2000年以上にわたっていわゆる国を維持し、これだけの文化を築き上げてきたんだから驚きだ。
事実、今現存する世界の国々の建国の歴史を見ても、欧州最古といわれるデンマークで8世紀、G8の国を取り上げれば、アメリカは1776年、イギリスが11世紀、フランスは1789年、ドイツは1990年、イタリアは1946年、カナダは1867年、ロシアは1991年なのである。デンマークとイギリスを除けば、せいぜい300年にも満たない歴史しかない国々なのである。お隣の中国だって、中国6000年の歴史なんてよく言われるけれど、いわゆる中国という地域は6000年、いやそれ以上はあっても、王朝や国が入れ替わり立ち代わりで、今の中華人民共和国の建国は1949年、70年にも満たないのである。
それを思えば、日本国は伝説上、西暦紀元前7世紀に建国されたといわれ、また今年西暦 2017年は皇紀2677年ともいわれ、考古学的な建国の年代でも西暦3世紀、5世紀、7世紀説が大多数に支持されているというから、いずれにしろ世界最古の国であることは確かだ。
これだけの長きにわたって国を維持し、文化を築き上げ、世界の人々が驚嘆する日本。これすべて、日本人の資質、名もなき日本人の資質に依るところ大である。
16世紀、日本でキリスト教の布教に努めたフランシスコ・ザビエルは「この国の人々は今まで発見された国民の中で最高であり、日本人より優れた人々は、異教徒のあいだでは見つけられないでしょう。彼らは親しみやすく、一般に善良で、悪意がありません。驚くほど名誉心が強い人で、他の何ものよりも名誉心を重んじます。大部分の人は貧しいのですが、武士も、そうでない人々も、貧しいことを不名誉とは思っていません。」と語り、
スコットランドの植物学者ロバート・フォーチュンは「日本人の国民性の著しい特色は、下層階級でもみな生来の花好きであるということだ。江戸郊外の小ぢんまりした住居や農家や小屋の傍らを通り過ぎると、家の前に日本人好みの草花を少しばかり植え込んだ小庭をつくっている。・・・。もしも花を愛する国民性が、人間の文化生活の高さを証明するものとすれば、日本の低い層の人々は、イギリスの同じ階層の人々と比べると、ずっと優って見える」と感動の目で日本人を見、
アインシュタインが離日の前日、日本国民への感謝のメッセージを『大阪朝日新聞』に寄せた中で、「予が1ヶ月に余る日本滞在中、とくに感じた点は、地球上にも、また日本国民の如く爾(しか)く謙譲にして且つ篤実の国民が存在してゐたことを自覚したことである。世界各地を歴訪して、予にとつてまた斯くの如き純真な心持のよい国民に出会つたことはない。又予の接触した日本の建築絵画その他の芸術や自然については、山水草木がことごとく美しく細かく日本家屋の構造も自然にかなひ、一種独特の価値がある。」と語っている。
まだまだある。珍しいところでは、
トロイの遺跡を発見したハインリッヒ・シュリーマンが帰国後の『日本見聞録』で、彼が日本で渡し舟に乗ったときのことを書いている。「あとで料金を支払う段になって、中国で味わった不快な先入観が頭をよぎった。どうせ法外な料金をふっかけられるに決まっているだろうから、それならば最初から高い金を渡しておこうと思い、規定の数倍の料金を渡した。すると船頭が不思議な顔をして、「これは規定の料金とは違いますよ」と言って、余分の金を突き返してきた。」と今もよく聞く日本人の正直さ、資質の高さを誉め、
安政6年(1859年)に日本に来たイギリス公使サー・ラザフォード・オールコックが、「物質文明について言えば、日本が、東方諸国民の第一位にあることは疑う余地がない。もし彼らに応用化学の知識において欠けるところがなく、機械工業が進歩するならば、彼らはヨーロッパ諸国民と優に競争しうるであろう。従って日本の統治者が政策として、交通および貿易を自由にし、日本をしてバーミンガム、シュツフェルド、マンチェスターなどと競争する自由を得せしむるならば、われらの蒸気機関や、すべての機械の驚くべき応用的知識は共に輸入せられて、彼らはたちまちのうちに、その手に成れる鉄器類をもってシュツフェルドと競い、その絹を以てリヨンと競争するに至ることは、疑う余地がない。」と驚くべき先見の目で日本の将来を語っている。
挙げたら切りがない。社会、経済、文化、芸術、すべての分野にわたって、鎖国中の江戸時代から明治維新にかけて日本にやってきた多くの外国人が、この極東の国日本を驚きの目で、信じられない目で見、語っているのである。
まさかこんな国が、東の端の端、およそ西洋文明とはかけ離れた地に、こんなに高度に文化文明を築き上げている国があろうとは思いもよらなかっただろうから、その驚きは頷ける。
そして今、世界はグローバル化され、下駄をはいて、ちょっと古臭い表現かな、世界を回れる時代になった。1年間で2千万人を超える外国人が日本にやってくる時代だ。その外国人たちも、上にあげてた日本人の資質の高さに驚きの色を隠さない。
20世紀の半ば、第二次世界大戦は、まさに日本の長い歴史を分断する出来事であったわけだ。建国以来の初めての日本国敗戦。核の洗礼。価値観の混乱。日本の文化が真の意味で世界に問われ、再評価されようとしている。大きく左に揺れ、また右に揺れ、今はどういう時代か、いずれまた本来の日本に収れんし、世界にその影響をもたらすこと必然である。
こうしてみてくると、今の選挙戦がいかに茶番劇か、今までの歴史においても、学んだ歴史が、英雄史が、賢い日本人にとって時代時代に上演された演劇の一コマで、家に帰ればまた黙々と仕事をし、飽きず弛まず、改良に改良を加え、騙さず正直に生きる日本人が見えてくる。
政治家諸君、会社経営者諸君、人生勝ち組を謳歌する諸君、見誤ってはいけないぞ。君たちは劇場の役者。お客さんにおひねりを投げてもらっている役者。お客さんに喜んでもらえる役者にならなけりゃ、ドツボにはまっちゃうぞ!

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