鐘の鳴る丘

 
♪♪♪鐘の鳴る丘 ♪♪♪
 
 
みどりのおかの あかいやね とんがりぼーしの とけいだい かーねがなります ちーんこーんかーん・・・

暮れも押し迫り,街中を歩いているとあちらこちらからクリスマスソングが流れてくる中,とあるレコード店から耳懐かしいこの曲が流れてきた。何で今ごろこんな曲がと不思議な思いもしたが,思わず口ずさんでいたぼくに,あの日の思いがよみがえってきた。この曲は1947年(昭和22年)から始まったNHKのラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の主題曲で,このドラマも主題曲も大変人気があり、翌年松竹によって映画化されたそうだ。そしてこの映画が僕の記憶に残るもっとも古い映画になるのである。というのも,・・・

僕がちょうど幼稚園に通っていた頃,当時住んでいた長屋のはす向かいに谷口さんという一家がおられ,たしか同い年くらいの娘さんとその弟がいて,この谷口さん一家に連れられてこの「鐘の鳴る丘」の映画を見に行った。映画館は当時僕の通っていた「三郷幼稚園」の近くにあり,家から4kmほどのところにあった。今となってはこの映画の内容などまったく覚えてもいないが,とても悲しくて悲しくていたたまれず,谷口さんには内緒でこそっと映画館を抜け出した。冬場だったような気がする。外に出ると寒くて寒くて,しかももうすっかり夜の帳も下り,通いなれたはずの道もわからなくなり,何時間かかって家にたどり着いたであろう。玄関の戸を開けると,父と母が飛び出てきて,普段は優しい両親にこっぴどく叱られたことを覚えている。

今は亡き母が,この曲がラジオから流れてくると僕がよく涙を流していた,といつも優しく僕を見つめて言っていた。

 

[追記]

「かーねがなります きーんこーんかーん」なんですね。ご指摘いただきありがとうございます。

今までずーっと「ちーんこーんかーん」とばかり思っていて、そのように口ずさんでいました。

でもこのままにしておきます。

 

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