仮想通貨という言葉をお聞きになった人は多いだろう。
しかしその実態と本質を知っている人は多くはない。
それもそのはず。仮想通貨が世間に注目され始めてまだ1年くらいだから無理もないし、逆に言えば、これほど早く世間に知れ渡った言葉としても珍しい。
仮想通貨といえばビットコイン。それはあたかも化学調味料といえば味の素といわれるのと同じくらいの意味を持つ。
そのビットコイン。実はひょんなことで生み出された。
サトシ・ナカモトという、いまだに身元不明の学者かシステムエンジニアが経済論文に発表したのが発端で、エンジニア達が面白半分で実験的に作ったのが最初のビットコインだといわれている。それが2009年。
そんなビットコインに初めて法定通貨との交換レートが敷かれたのが2009年の9月で、1BTC=0.07円であった。ちなみにBTCとはビットコインの単位である。
そして、ビットコインが通貨として初めて使われたのが、2010年5月、ピザ2枚を1万BTCで交換したというから、仮にピザ2枚で3000円としても、1BTC=0.3円ということになる。
それからのビットコインの値動きの推移をざっと見ていただきたい。
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2015年前後まで数百円から数千円の間で推移し、2016年中ごろあたりから1BTC=30,000~40,000円で売買されだして、株やFXと同じ投資対象として注目されるようになるのである。
そして2017年に入るや、ビットコインは急激に値段を上げ、1月には80,000~90,000円、2017年4月に改正資金決済法によって有価証券というお墨付きが国から与えられるや、その値段は鰻上り、11月には1BTC=100万円を突破。1か月後の12月には200万円を突き抜けて史上最高値の220万円までマークしたわけだから、この1~2年の間にビットコインに投資した人の中から、数千人から数万人といわれるほどの「億り人」(資産1億円に到達した人の呼び名)が生まれたという。それも、仕組み的にはパソコンにある程度精通していなければ扱えないので、半数以上はいわゆるゲーム世代といわれる20代や30代の若者というから驚きだ。
2010年前後に早くからこのビッドコインに目を付けて、当時1BTC=0.1円くらいだから、10万円で100万BTC買えたわけで、7年後の2017年には、実におよそ2000万倍の2億円に膨らむことになる。
だからこのころからビットコインに目を付けてひたすら買いあさった人になかには、10年足らずで資産数百億円になった人も結構いるというから、もうバブルもいいところだ。
5年前に東北の花巻から東京に出てきて、飲まず食わずの生活をしていた若者が2年前にこのビッドコインに投資を始め、今や資産5億円。シンガポールの豪華マンションで1日数時間、パソコン操作だけで1日数十万円が入ってくるような生活を送っている若者がYouTubeに出てきて、様々なICO(Initial Coin Offeringの略称で、仮想通貨で事業立ち上げ資金を集める仕組み。新規株のようなもの)情報の解説をしていたり、パソコン片手に世界中を旅しながら、毎日数万、数十万円を稼ぎながら生活する若者が沢山いる。
その仮想通貨も今や世界に1000種類はあるだろうといわれ、政府通貨の不安定な国ではむしろ仮想通貨の方が信頼されているとところもあったり、アマゾンやデル、イーベイといった世界的規模の販売サイトから町のピザ屋さんといったお店でも支払い決済に使えるところが急速に増え続けていて、近い将来には、紙幣とか硬貨は博物館でしか見られなくなることだって考えられる。
これぞまさしく21世紀が情報革命の時代だといわれる一つの例証だが、17世紀~18世紀にかけての産業革命がイギリス中心の地域的な革命であったのに対して、今世紀の情報革命はまさしく世界を巻き込んだ地球規模の革命なのである。
インド、アフリカに行ってもチベットに行っても、多くの人たちがスマートフォン片手に忙しく行き交う光景は、これからの世界が大変な時代に代わっていくことを暗示している。
さて、もう人生の大半を生きた人と、これからを生き抜こうという人とでは、こうした世界の変化にどうとらえるか、おのずから違いはあるだろうが、人の価値観は様々。自分は自分の道しか歩めないわけだから、自分の思うように、頑固でいて、しなやかに生きていってほしいものだ。