齢80を超えれば

齢80を超えれば、今まで直面したことのない現実にたじろがされます。

この20日(金)に「大腸CT検査」を予約していました。というのも、長年慢性便秘で悪戦苦闘してきたわけですが、最近はいろいろな便秘薬が開発されていて、あれやこれやで自分流に薬を調整して何とか切り抜けてきたわけです。
ところが最近はこの薬の効きも悪くなって、一度大腸検査を受けたほうが良いということになって、最近大幅に改善された「大腸CT検査」を受けることにしました。
今までは大腸検査と言えば大腸内視鏡検査でしたが、これにはある出来事でトラウマがあって、大腸検査を避けてきましたが、「大腸CT検査」はレントゲンでCTスキャンし、得られた画像からコンピューターで画像解析し、内視鏡と同じような3次元画像を得、診断するというものです。
検査前日は、病院から支給されたペースト状のおかゆを3食、その合間に造影剤、最後は寝しなに下剤を飲み翌日に備えます。
無事そこまでは終えたのですが、晩方からどうも体の調子がおかしい。風邪に罹ったようです。それでも検査を受けようと、朝からいろいろと準備はしたのですが、まず肝心の便が出ないし、体がふらふらする。予約時間は午前10時。とうとう9時に検査をキャンセルする電話を入れました。

体温を計ったら、37.3度。平熱は36度を切る具合ですから、今流行りのインフルエンザにでもかかったら大変です。近くに内科医院はないかと探したらすぐ近くにあったので早速予約。午前の診療時間は過ぎていて、午後5時からの診察。5時と言えば最近はもう真っ暗です。医院を訪ねると、2階建ての2階にある。普通ならこういう場合大概エレベーターがあるんですが、階段しかない。『球脊髄性筋萎縮症』という指定難病持ちに僕にとってはこの2階に上がる階段が大変なんです。手すりと杖を頼りにやっと2階の待合室に上がった時にはもう疲労困憊。診断受付の窓口にも行けない状態です。

風邪の症状で来院した時には、本来、まずインフルエンザの検査をしなければならないらしいのだそうですが、この検査キッドを医院の前の処方箋薬局から買ってこなければならない。また階段を下りてなんてことはとてもとてもできないので、インフルエンザの検査なしで、インフルエンザにも有効性のある漢方薬『麻黄湯』を処方してもらうことになり、その晩は帰宅しました。

次の日から3日間は、体温は平熱の戻ったり、37度に上がったり、なんとなく体がだるくて通っているジムにも行けない状態が続きました。

そうしてクダクダ過ごした3日目の夜中、突然呼吸ができなくなって飛び起きました。のどがカラカラ。すぐベッドわきに置いてあったペットボトルの水を飲んでやっと気道が開き息ができるようになりました。一瞬このまま死んでしまうのではないかと思ったほどの恐怖でした。
この春先から、後鼻漏(鼻汁がのどに流れ込む病)で仰向けには寝られない状態が続いていました。もちろん耳鼻咽喉科に掛かり、寝しなにはいつも処方された抗アレルギー剤と去痰剤は飲むのですが、時々は鼻水が気道に入りそうになり、息が詰まることはありました。しかし今回のようなことは初めてです。

翌朝、12月24日、大阪南部りんくうタウンにある急性期医療の中核病院の『りんくう総合医療センター』(緊急度・重症度が高めな急性期の患者に医療を行う医療施設)の耳鼻科に向かいました。

研修医の指導を行う経験豊富な医師の診断は、近くの掛かり付け医と違って、後鼻漏はほとんど治っているが、いまだに気管に障害があるのは、胃の逆流性によるもので、胃酸によって気管が荒れていることからくるものだと考えられる。よって胃酸を弱める薬を寝る前に飲むようにとの診断。と同時に、寝る部屋の湿度を挙げるようにアドバイスされました。

朝9時半に家を出て、診察が終わったのは午後1時半。大半は待ち時間だったのですが。疲れたのなんの。ここまで来た甲斐はあったのか。それはこれからの経過いかんです。
ちょうど昼食時も過ぎた頃なので、病院9階にあるカフェ&レストラン『カフェ・ラ』に入りました。明るく開けた窓からは、目の前には『りんくうタワー』が聳え、高くててっぺんが見えない。その右には関西国際空港連絡橋(Sky Gate Bridge)が空港にまで伸びっています。遥か沖合の関西国際空港からは5分から10分おきに飛行機が飛び立って行きます。海のかなたには淡路島の島影が浮かび、右には六甲山系の山並みが高くそびえています。1隻の小型高速船が白い航跡を残して左から右に走っています。
大きな卵サンドとカツサンドを頬張りながら、去来するのは夢か現か幻か。
この1週間が物語るように、齢80を超えた老人の病というものは、風邪一つとってもままならないということです。若いころには難なく乗り越えられたことが、二重にも三重にも負担となって圧し掛かってくる。いったいこの現実をどう捉え、どう対処すべきがいろいろと考えさせられます。

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