★☆★ ブナ林 ★☆★
さる自治体の「内山ブナ林」の見学会に参加した。地元のブナ林を保護育成していくための啓蒙活動の一環だ。参加したのは抽選に受かった40名の一般市民。60名あまりが応募したというからまあまあの関心の深さはあるのだろう。これまでにすでに2回見学会が催されていて今回は3回目ということになる。
日本海側の「天橋立」の近くにある「内山ブナ林」は関西では有数のブナ林である。2台のマイクロバスが準備され、片道およそ3時間の道中では市の職員、ブナの専門家、野鳥の専門家のレクチャーがあり、まさに「先達はあらまほしきこと」を実感した。現地近くでは地元のNGO職員が案内人として加わった。あいにくの曇り空で時折小雨がぱらつくうっとうしいお天気だったが、「ブナ林見学にはもってこいのお天気」である、と慰められた。
まだ紅葉には時間があるのか、色づいている木々はわずかだ。登りは普段の運動不足から少しきつかったが、やはり空気はおいしい。木々の名前を教えてもらい、時折聞こえてくる野鳥の名前を教えてもらい、聞き耳を立てるのも初めての体験だ。ブナの木は昔は家の普請とか、燃料に利用され地元の人たちにとっては密接な関係があったそうだ。そういえば、人の高さくらいまではふた抱えもみ抱えもある台木から二股に幹が伸びているブナが多い。そのあたりで切り取られ、そこから新たに幹が伸びてそうなったそうだ。森林の奥には幹回り4,5メートルはある最大のブナがあり、樹齢何百年にもなるそうだ。
こうして4時間余りのブナ林散策は終わったわけだが、あたりの集落も昔ながらの山里の風情を残し、雪深い地であるのだろう、間もなく訪れる冬に備えて、もう藁葺きではないがトタンぶきの急斜面の屋根は滑りやすい塗料でピカピカに塗られていた。
こうした催しものに参加したのは初めてだが、とても有意義な見学会であったと思う。と同時にあらためて、こうして「ブナ林見学会」を催さなければならないほど、ブナ林、広くは広葉樹林が少なくなったことの意味を考えざるを得ない。
毎年毎年多くの人たちを悩ます「花粉症」も元をただせば、こうした広葉樹林を切り倒し、山という山はすべてスギ、ヒノキに植え替えてしまった、またそれを許した国の森林政策・行政の大失策である。国産のスギ、ヒノキ材は今や需要が激減、逼迫していて切り出しは勿論、手入れも行き届いていないのが実情だ。これを追究する声はあまりにも小さい。
今や20%を割るまでに減少した農家人口に比例して、農林水産業に対する国民的関心は薄くなり、なぜこうして毎年「花粉症」に悩まされているのか、その根本原因を探ろうともしない。「スギ花粉が原因」にとどまって納得してしまっている。
今回の見学会にもこの点に関しての関心が薄く、「大人の遠足」にとどまっているのではないかという不満が残ったことは否めない。