今年2017年はロシア革命が起こって100年になるという。
20世紀を代表するビッグ・イベントといえば、第一次世界大戦、第二次世界大戦とこのロシア革命であろう。
第二次世界大戦は世界の61カ国が参戦し、軍人・民間人合わせて5000万~8000万人、世界人口のおよそ2.5%の犠牲者が出た人類史上最大にして最悪の戦争だった。
毒ガス兵器、戦車、飛行機が使用され、900万~1500万人の犠牲者が出て、次に世界大戦が起こったら世界が滅亡するとまで言われた第一次世界大戦からたった30年足らずで起こったのが第二次世界大戦だったのである。
人類は生物中最も凶暴な生き物と言っていい。
さてロシア革命だが、
11月7日、まさしく100年前の同月同日にロシア革命が起こった日だが、NHKがこの日、ETV特集「ロシア革命100年後の真実」をBSで流し、ロシア人の60%がロシア革命を肯定的にとらえ、特に18歳から24歳の世代では70%が肯定的にとらえていると報じた。別の世論調査では94%のロシア人がロシア革命を誇りに思わず、あれは「酔っ払い革命」だったと言う人さえいると報じているのもある。
世論調査は問われてみれば、「Yes」か「No」で答えなければならないから、普段関心がなく、忘れていることでも思い出さざるを得ないので、60%だの94%だのという数字が躍るが、おひざ元のロシアでさえ、もう忘却の彼方の出来事と思われていることも確かなようだ。あの愛国者プーチンでさえ今回これといった記念行事をやらなかった。
日本ならもっとその傾向は強い。受験生なら「1917(行く人なみだのロシア革命)」と受験勉強で覚えなければならない必須年号であっても、ほとんどの日本人には1917年と2017年の関連性なんてまるで関心がない。
ただ現在の60代以上の日本人には多少の関心があるかもしれない。
若い頃に学生運動が盛んだったこともあり、ある意味でロシア革命やソ連社会主義といったものに郷愁を感じている人も少なくはないはずだ。
日本では1920年代早くからまさにロシア革命の影響下で様々な分野でマルクス主義的サークルが誕生し、政治・社会の分野においても文化の分野においてもその影響力は大きいものがあった。
1922年には日本共産党ができ、日本が軍国主義化してゆく中で革命の精神は若者を魅了し、1923年には日本共産青年同盟が設立される。
そして第二次世界大戦の終了後も、いわゆる冷戦時代と言って、アメリカとソ連をそれぞれの盟主とする自由主義諸国と共産主義諸国が対峙するなか、日本国内においても保守勢力と革新勢力が激しい政治闘争を繰り広げ、安保闘争、日航機ハイジャック事件、浅間山荘事件、連合赤軍の様々な事件、等々、日本は自由主義諸国の中でも際立ってロシア革命の影響を引きずってきたのである。
いまだに日本警察は連合赤軍の海外逃亡者を追い、国内においても指名手配中の者もいる。
学者、思想家、ジャーナリスト、その他文化人の中にも転向組も含め、共産党シンパが少なからずいると聞く。宝塚歌劇団がロシア革命100年にちなんで、「『神々の土地』~ロマノフたちの黄昏~」というミュージカルも上映している。
世界を見ても、マルクス・レーニン主義を標榜する共産主義政党が一党支配を敷く社会主義国は、1991年に盟主ソ連が離脱してから多くの国々が離脱したが、中国、キューバ、ラオスがいまだに残り、共産主義ないし反資本主義を掲げる政党の64党が40か国において国家レベルの代議員を有しているのである。日本共産党もその一つである。
おもしろいのは、いまシャカリキっている北朝鮮が憲法からマルクス主義と共産主義の語を削除して、金日成が提唱した主体思想とやらを標榜していることだ。日本共産党も見習った方がいいと思うのだが。
自分の人生を振り返っても、人生を左右するほどの影響があったことは認めねばならない。
20世紀のロシア革命とその後の社会主義国家の誕生は人類史上最大の社会実験だったわけだが、多くの犠牲が払われ、どれだけの夢が実現したのかはなはだ遺憾としか言いようがない。
しかし、その影響力が自由主義諸国の中でも際立っていた日本が、最も社会主義を実現しているといわれるのも何とも皮肉な話だ。