歴史は繰り返す― History repeats itself ―

今では人口に膾炙した言葉であるが、元は古代ローマの歴史家クルティウス・ルフスの言葉「History repeats itself.」を翻訳した言葉である。
いつの時代も人間の本質に変わりはなく、過去にあったこと、起こったことはまた後の時代にも繰り返して起きるということを意味する。
第二次世界大戦が史上最大の戦争で、全世界で約6000万人、アジアで約2000万人にのぼる犠牲者を出し、過去の戦争に比べ一般市民の犠牲が多数に上ったことが特徴である。
特に我が国は原子爆弾により一瞬にして広島12万人強、長崎7万人強の犠牲者を出し、被爆後5年間を合わせれば広島20万人、長崎14万人というとてつもない犠牲者を出したのである。
その25年前に起こった第一次世界大戦が、犠牲者数2600万人に上り、16世紀以降の主な戦争の犠牲者数で最も多かったフランス革命/ナポレオン戦争(1789年)における死者数490万人のおよそ5倍は、世界の多くの人たちに近代戦争の恐ろしさと悲惨さを知らしめ、もう二度とこういう戦争は起こしてはならないと警鐘を鳴らした矢先の第二次世界大戦であったわけだ。
そして、第二次世界大戦以降今日に至るまでに世界で起こった地域戦争・紛争の数はもう100をはるかに超えているのである。まさに「歴史は繰り返す」である。
尖閣諸島問題、竹島問題、北方領土問題、日本を取り巻く国際環境はますます厳しくなりつつあるが、果たして日本国民の中にどれだけの認識と自覚があるのかと考えれば鳥肌が立つ。
世界で冠たる平和憲法を保持し、徹底した平和教育が施され、日本は世界ではまれな「お坊ちゃん国家」、「お嬢ちゃん国家」になってしまったような感がある。
「平和ボケ」と自虐的には言うけれどどれほどの危機感を持っての言葉なのか、やることなすことは言った本人もそうだし、国中あげて温泉で鼻歌状態である。
日本の世界ではなく、世界の日本を見る目をもっともっと養わなければ、太平洋戦争がそうであったように、いつの間にか戦争に巻き込まれ、「歴史を繰りかす」を実証して見せかねない。
尖閣諸島問題に限っても、資源問題、漁業問題に矮小化されているが、極めて国家戦略的、軍事側面的な問題であり、中国はいつか本格的に尖閣奪取に乗り出してくること必然のような気がする。
日本には自衛隊という生半可な名前の軍隊があるが、日本国民はどれだけその実態と果たすべき役割を知っているであろうか。
第二次世界大戦のトラウマからいまだ脱していない日本は、軍事ということには目をそむけ、「平和」という言葉にかまけ、自己欺瞞に陥ってはいないだろうか。

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