超常現象?

 
30年前の話です。

生徒の強化合宿で四国の剣山に行きました。白い装束に身を固めた人たちも多く来ていて山岳信仰の山でもあるわけです。
バスでほとんど頂上近くまで行くんですが、後の登りがきつい。
やっと宿舎にたどりつき、旅支度を解き、部屋割も済んで夕食を待つひと時、ぼくたち教師はこれからの段取りなどを話し合うミーティングをしていました。
そこへ女子生徒たち数人がやって来て、中学3年生のA君がいじめられていると言うんですね。
さっそく行ってみるとA君たちと数人の男子生徒が車座になってトランプをしている。
A君にどうしたんだと聞くと「なんでもない」というんですが、おでこが真っ赤にはれていて、目の下には涙を流した跡がある。
突っ込んで聞いてみると、「ババ抜き」というゲームをしていて、A君はよく負け、その度におでこを指ではじかれる罰を受け、そうなったというんですね。
A君は言われるような「いじめ」を受けていたんではないというんで、安堵したわけですが、別れ際に何の気なしにA君に負けない「おまじない」をかけてあげようと、「ババ(ジョーカーですね)」をA君の両手の平に挟ませ、ぼくの右手の平をA君のおでこにあてて、「ババをKOROSE!と唱えなさい」と言いました。
そしてその場を離れ、再びミーティングに加わったわけですが、それから1時間ほどして、今度は別の生徒たち数人がやってきて、A君が不思議なことをする、見に来てくれ、と言うんですね。
ほかの先生たち数人と言われた部屋に行ってみると、A君を囲んでたくさんの生徒が集まっている。
聞いてみると、A君が「ババ」を百発百中当てるというんですね。やらせてみるとなるほど裏向けのカードからものの見事に「ババ」を当てる。
どうして?とA君に聞いてみると、
先ほどのことがあって、また「ババ抜き」ゲームを始めたんですが、今度はA君には絶対「ババ」が残らない。連戦連勝だったというんですね。そしてA君はみんなにこう言ったと言うんです。
「おれ、左の奴のカードを触った時、先生の言うとおり心で唱えたら、時々ビビッと電気が走るねん。あれババやで。」
信じられないみんなは、試しにカード繰ってA君に渡し、A君が裏向けにして手のひらに載せ、そこからカードを1枚1枚落として行くと、あるところで「これや!」というんで、そのカードを開けてみるとまさしく「ババ」。
何度やっても当たるんでうわさを聞いたほかの生徒たちもたくさん集まってきて、とうとうぼくたちに言いに来たというわけです。
ぼく自身もまたほかの教師たちも、初めはてっきり手品だと思っていたわけですが、どのトランプで試してみても、どうトランプを繰ってみても当たる。A君も手品ではないと真顔で言うし、A君はうそやはったりを言う人柄ではない。
もう周りの者はキツネにつままれたも同然、こんな不思議な体験はだれも初めてのことなので、合宿に参加した全員が知ることになったわけです。
 
当時、日曜のテレビ番組で、確か「奇人変人大会」というのがあって、口からカミソリの刃を飲み込んだり、やけ火箸を口の中で消したり、常識では考えられないようなことをする人が登場する番組があり、登場した人と推薦した人が賞金と白いギターをもらえました。 
合宿から帰って、A君をこの番組に出そうということになり、みんなで準備に取り掛かったわけですが、さあいよいよという段階になって、肝心のA君が「できない」というんですね。当たらなくなっちゃった。仕方なくこの企画を断念したわけです。

先ほども言った通り、A君は嘘やはったりを言う人間ではない。そのA君が手品ではないと言うのだから信じざるを得ない。 
でも不思議ですね。なぜこんなことが起こるのでしょう。ジョーカーとほかのカードの違いと言ったら、絵柄くらいの違いしかありません。
色の違いによる電磁現象なのか、使われている色彩原料の金属成分に放射性元素が含まれているかどうか、その違いによるものなのか、いずれにしろ計量しがたい違いだろうし、人間の指先にそれを感知する能力があるのかないのか、曰く不可解としかいい様がありません。
 
また、剣山という場所で起こった現象で、大阪に帰ってきたら出来なくなったのですから、修験者の場所であるということはともかく、その土地の何らかの影響もあるのかもしれません。
その日は積乱雲が非常に発達していて、例のトランプの最中にも雷鳴がとどろき、高山ですから稲妻が水平に走る光景を何度も目撃したような日でした。

皆さんはどうお考えですか。意見をお寄せ下さい。
また、皆さんにもこうした不思議現象を体験されたことがあればお聞かせください。

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