♪♪♪ 中田喜直 – ちいさい秋 みつけた ♪♪♪
旅先で買い物をしての帰り道、暮れなずむ田圃道を歩いていると、どこからともなく香ばしい煙が漂ってきた。前方を見上げると、暮色に染まった山並がかすかに明かりをとどめる夕空を背景にくっきりと立ちはだかっている、その夕空に淡いけぶりが微風にあおられながら左から右にゆっくりと立ち上っていく。収穫を終えた田圃で籾を焼いているのだ。右に立つ糸杉の並木の上ではねぐらを求めてやってきたカラスが4,5羽小さな円を描きながらゆっくりと舞っている。向こうのほうの農家には明かりがともっていて人影が動く。
今日の泊まりは山一つ越えた川筋の民宿だ。まだこれから小一時間。ぼつぼつお腹もすいてきた。しかしなぜか足が進まない。何とも言いようのない寂寥感がこの夕闇の中に漂っていて、この夕闇の中に消えていってしまいそうな自分を感じる。都会の雑踏の中にいる時感じる寂しさとまた違った寂しさだ。
この寂しさは何だろう。秋の夕暮れに感じるこの寂しさは。限られた命でしかない自覚がふとよみがえるのかもしれない。あの暑い夏、青々とむせかえるように広がっていた田圃も、今はこうして刈り取られた根っこの株だけが整然と並び、その上で籾殻を焼く煙は「鳥辺山の烟」と同じかもしれない。
今日の泊まりは山一つ越えた川筋の民宿だ。まだこれから小一時間。ぼつぼつお腹もすいてきた。しかしなぜか足が進まない。何とも言いようのない寂寥感がこの夕闇の中に漂っていて、この夕闇の中に消えていってしまいそうな自分を感じる。都会の雑踏の中にいる時感じる寂しさとまた違った寂しさだ。
この寂しさは何だろう。秋の夕暮れに感じるこの寂しさは。限られた命でしかない自覚がふとよみがえるのかもしれない。あの暑い夏、青々とむせかえるように広がっていた田圃も、今はこうして刈り取られた根っこの株だけが整然と並び、その上で籾殻を焼く煙は「鳥辺山の烟」と同じかもしれない。
・心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ(西行)
・見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫やの秋の夕暮れ(定家)
・寂しさはその色としもなかりけり槇立つ山の秋の夕暮れ(寂蓮)
・山の端に籾焚く煙立つ見えて香りにむせぶ秋の夕暮れ(Santa)