私信 ーストレイシープさんへー

えらいことになってるんだね。
でもね、よーく考えなくちゃいけないよ。
一郎君をはじめ、来栖家の人たちがどういう人たちかよくわかんないけど、
至極平凡なことを言ってるんじゃないかなぁ。
平凡なことがたまには我慢ならないことってあるよね。
でもね、その我慢ならない平凡が、人が生きていく上で大切な真理を含んでいることもあるよ。
何も平凡に合わせろと言ってるんじゃないけど、
飛び出た人ほど、それが我慢できなくてなかなか理解できないんだよね。
夏の農道でよく目撃したんだけど、
ミミズがコンクリートの農道でたくさん干からびて死んでいるのね。
実にたくさんなんだ。
どうしてこんな炎天下の農道に出てくるんだろうね。
土の中でいるほうがよっぽど涼しくて居心地もいいだろうにね。
退屈したんかなあ?新天地を求めた勇者なんかなあ?
いろいろ考えてみるんだぁ。
いちど生物学者に聞いてみたいんだけど、不思議でたまんないよ。
でもね、我々人間だって、お天道様から見たらそんなミミズと同じかもしんないよ。
地道に地道に生きることは辛抱がいるよね。
「非凡なる凡人」て言葉、昔々学校の教科書に出ていていまだにこうして覚えているんだけど、
本当に非凡な人は、凡に徹し凡を制する人なんだよ。
凡と対立するようでは非凡になれないんじゃないかなあ。
うん、わかっているよ。
何も非凡を求めてるわけじゃないってんでしょ。
難しいよね。
できたら、何も壊さないで、そして夢を実現してほしんだよね。

ストレイシープさんへ

iPhoneと行く秋

 
いつからか、夜明けを待たず散歩に出る習慣ができた。そのときいつも手にするのがiPhoneである。こんな朝早くにまさか電話はあるまいに持ち歩くのが決まりになっていることもあるが、iPhoneから流れる音楽が明け行く風景に溶け込んでいく中、まどろみから覚醒していく心地よさを感じたいからだ。
iPhoneは音質がとても良くてイヤホーンなしで音楽を聴くことができる。仕込んだ曲はクラシックあり、演歌あり、懐メロあり、エスニック、タンゴ、シャンソン、アイリッシュ何でもありで、シャッフルしてあるから次にどの曲が飛び出すか知れたものではない。実に支離滅裂だ。歩調もそれに合わせて、ダンスの足取りになったり、スローテンポになってみたり、「悲しみのアダージョ」が流れ出したら足取りも重くなる。
やがて行く先に日が昇り始めると、iPhone内臓カメラの出番だ。このカメラも実に優れもの。画質は一眼レフにも劣らない。惜しむらくはズームが利かないことだ。
明け行く空の風景、道端に咲く花々、枯草、湖舟の釣り人、今は深まりゆく秋を追っている。
さあ、お天とう様、今日も一日、ぼくを生かしてくださいよ。