春うらら


 
こう陽気がいいと家にじっとしていられない。
近くの桜は2、3日前はあんなに満開だったのに、今朝はもうすっかり花を落としている。
吉野の上千本あたりはまだ満開だろうし、奥千本だと4月下旬まで咲いているはずだ。
しかし、吉野までは少し遠いし、あそこはもうこのシーズン車がいっぱいで、駐車場確保で一苦労も二苦労もする。
それではと、西行ゆかりの弘川寺や京都醍醐寺などはどうかとネットで調べたら、これまたもう葉っぱマーク。
ああ、今年はもうこれで良しとするかと、普段の運動不足もあり、家から3.5㎞離れたところにあるドトールに歩いて行くことにした。

青空がいっぱいに広がり、汗をかくのが嫌だから、できるだけ薄着にして出かけたが、風が結構強く、ちょっと肌寒い感じだ。
きっとこの風が近所の桜の花を吹き飛ばしたに違いない。でもこの風がいい。多少強めの風が好きだ。
頬に当たり、耳に、どう表現したらいいんだろう、スーじゃない、ビワーンでもない、何とかこの風の音を表現したいといつも思うんだが、今日も表せない。
その言い表しようのない風を切って歩くと、ほんとにルンルン気分になる。踊りだしたくなるんだ。

ドトールにつくともう汗びっしょり。今日は気温が少し高いからだろうか、冷房も入っている。お手拭きを余分にもらって、いつも通りアップルパイに『本日のコーヒー』を注文した。
ここでは本を読むか、スマホでNHKオンデマンドを観てひと時を過ごす。
今日は特選ライブラリー2017年放送の特集、『小さな旅 山の歌 総集編』を観ることにした。
懐かしい山々の映像が次々に流れ、もうこの喫茶店も自分にとっては貸し切り同然だ。
尾瀬も良い。ニッコウキスゲに青々とした湿原。至仏山に燧ケ岳。いい眺めだ。懐かしさがどっと込み上げてくる。そうだ、孫たちに招集をかけて、もう一度ぜひ行こう。
梓川に河童橋。そこから6時間かかるそうだが、そんなに遠くだったけ、涸沢のカール。思い出すなあ、後立山から雲ノ平、ここは道に迷って行けず仕舞いだったが、蓮華を通って双六、それから槍を経て奥穂高。途中の大キレットの『飛騨泣き』は本当に怖かった。良く行けたもんだ。若かったんだ。もう今はとてもとても。そして穂高岳から涸沢に降りる涸沢カールの九十九折道の長かったこと。すぐ目の下に涸沢小屋が見えるのに、降りても降りても辿り着けないもどかしさ。

オンデマンドの余韻もそこそこに、帰り3.5㎞も歩くことにした。
スマホから流れる歌がこれまたノスタルジアを掻き立てる。あがた森魚の『赤色エレジー』、ガロの『学生街の喫茶店』、裕次郎の『赤いハンカチ』、芹洋子の『坊が鶴讃歌』、『国際学連の歌』、次から次に流れ出る曲にはそれぞれの思い出があり、今日は何という日だろう、風は少しましになって、藤の花がわずかに花開き、名もよくわからないが色とりどりの花があっちにもこっちにも。
〈ころり寝ころべば青空〉まるで山頭火の心境だ。

自分のあくがれを満たそうとすればするほど、寂しさや悲しさもよみがえる。しかし、いつまでたってもあくがれ尽きない自分を感じる一日になった。



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