畑仕事を終え、いったん家に帰って大好きなアップルパイとコーヒで一息ついで、さてさて、汗ばんだことだし、近くの温泉でひと風呂浴びようかと外に出ると、まぶしいくらい日がさしているのに大粒の雨が降っている。
 狐の嫁入りだ。
 いつまでも寒い寒いと言っている間に桜の花が咲き、そしてあわただしく散っていき、今はもうほとんど葉桜になっている。
 温泉に向かう山向こうには今年はコブシがあっちこっちに群れ咲き、遠くから見ると桜と見まがうばかりだが、そのコブシも純白を緑に染め始めていて、季節の移り変わりのなんと早いことか。
 驟雨とは夏の季語だそうだが、もう夏の訪れかもしれない。
 そんな驟雨も止み、道を右にカーブを切ると、明るく輝く琵琶湖が見えた。
 なんとなんとその琵琶湖のこちらから向こうの対岸に大きな虹がかかっている。
 上り口と下り口がはっきり見える見事な虹だ。
 思い出した。
 狐の嫁入りの美しい伝承がある。
 確か長野地方の言い伝えだったと思うが、狐は天気雨にかかる虹の橋を渡ってお嫁に行くそうだ。
 ほんとにそうかもしれない。この虹の橋ならきっと渡って行けそうだ。
 おーい、幸せになるんだぞ。
 
 