Yahoo!検索に「3.11」と打ち込むと、
「3.11、検索は応援になる。」という見出しとともに「検索ありがとうございます。被災地の今を知りたい、応援したい。そんな想いの検索を力に。本日、『3.11』というキーワードで検索された方おひとりにつき10円が、Yahoo!検索から復興支援のために寄付されます。」
という画面が出る。さすがYahoo!と拍手を送りたい。
塵も積もればということわざがあるが、10円が決して塵とは思わないにしろ、今の時代、まさかまさかの大金になる可能性だってある。みなさんもぜひYahoo!検索に「3.11」を打ち込んでいただきたい。
「3.11」といえばいうまでもなく「東日本大震災」とそれに伴う「福島第一原発事故」が起こった日である。
3.11とか9.11、1.17、古くは2.26とか5.15といったように歴史的大事件を○.○○と表記することが多くなった。こうも増えたらその数字の表す事件がどんな事件なのか判別がつきにくくなる。受験生泣かせにもなる。
それはともかくとして、
この「3.11」は今の日本にとってはまことに大きな数だ。
それこそ、Yahoo!検索に「3.11」を打ち込むと、出るは出るは、事件以来ちょうど5年目という節目になる年ということもあり、当時の災害の様子から今なおその復旧が国を挙げての大事であるということ、被災者の苦闘と再建・復興の喜びなどなど、怒り、喜び、いらいら、勇気、いろんな感情がないまぜになって胸を締め付ける。
おりしも、3月9日、1~2月に再稼働したばかりの関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐる大津地裁の山本善彦裁判長の出した2基の原発運転差し止め、中でも現在稼働中の第3原発の仮処分決定の意味を考えたい。
国を代表する専門家らが議論して精緻に練り上げた安全規制の基準や、2年以上に及ぶ高浜原発への安全審査や検査の結果再稼働した原発問題を司法が、といっても結局のところ裁判官という一個人が裁断してよいのかどうかという問題である。
そもそも民主主義という政治形態というか思想が、衆知を集め物事を決定していくというルールの上に成り立っているわけだが、今回の司法判断が果たしてそれを具現しているといっていいのかどうか大いに疑問である。
「原発の安全基準」という極めて高度な技術問題を「司法」(裁判官)が判定できるものなのかどうか。過去においても「再稼働停止」と「再稼働OK」の相反する決定が下され、そのたびに周りは司法判断に振り回されている状況がある。
原子炉の安全稼働は絶対に守っていただかねばならないが、といってリスクゼロを目指すあまりそれに伴う経済的損失も計り知れない。
「保育園落ちた日本死ね!」とせっつかれる日本経済のひっ迫状況の中で、高浜原発2基の稼働停止による経済損失だけで1日3億円、全原発稼働停止による年間損失7兆円(日本経済研究所による試算)は真剣に考える必要がある。
こう言えば必ず帰ってくる反論は、「経済が先か安全が先か」と問われるわけだが、これは決して二者択一の問題ではなく、できる限りの安全を確保しながらの経済バランスを考えなければ、結局は安全も確保されず経済も破たんするということになりかねない問題だ。
今地震が起こるかもしれないぞ!マグニチュード9.5の!
経済はどうにでもなるが、福島級が2度3度で日本はおしまいじゃん!
確かに!
でも、「保育園落ちた日本死ね!」、「介護疲れで老夫殺害!」、これもまた切羽詰まった現実だ。
最高裁が1992年に出した、「手続きに誤りがなければ専門家の意見を尊重する」という判断がやはり本筋で、今回の大津地裁判決はそれを逸脱してはいないだろうか。
実際、全国各地に原発再稼働に関する訴訟はたくさん提起されていて、裁判になった例でもこの最高裁判例に従う裁判官は多く、住民が勝った裁判は過去3回しかない。その意味で、大津地裁の決定は異例なケースである。
ただ、福島原発事故の原因が解明されていない中で、地震・津波への対策や避難計画に疑問が残ると指摘し、安全性に関する関電の証明は不十分とした点はうなずける。
福島原発事故の直接的原因は、地震による原子炉の損壊ではなく、計画当初から指摘され、その後にも再三にわたり指摘されてきた津波対策に対する警告を東電が無視し続けた結果、二次電源の喪失によるメルトダウンにより引き起こされたのが今回の大災害の直接的原因だという認識が明確化されていないことが、司法判断を誤らせている。
そもそも、出来合いの原子炉をできるだけ安く設置するために、その仕様に合わせて35mの台地を25m削って10mの敷地にし、二次電源もできるだけ下に据えたという経済効率一辺倒の考えがしっぺ返しを食らったわけだ。
メルトダウンのマニュアルがあっても誰も読まない、少なくとも14,5mの津波対策を早急に行わなければという事故直前までの警告にも知らんぷり。
このあたりの真剣な原因究明と責任の所在を明らかにしない限り、今回のような混乱はまだまだ続くであろう。