惑星探査衛星「はやぶさ」の成果

月までの距離が360,000km、小惑星「イトカワ」までの距離が300,000,000km、敢えて距離をこう表示したのも距離感を実感していただきたいからだ。
ちなみに、火星までの距離が80,000,000kmだから、「イトカワ」は月はおろか、火星のさらに彼方にある、直径わずか300m、長さ500mほどのジャガイモの形をした小惑星なのである。
しかも、ここ1億年の間に地球に衝突する可能性があり、衝突した暁には、恐竜絶滅の原因になった過去の小惑星衝突とは比べ物にならないほどの被害を地球にもたらし、人類絶滅の危険性もあるといわれるから、なんとも恐ろしい小惑星なのである。
その小惑星に、日本の惑星探査衛星「はやぶさ」が2003年5月に打ち上げられ、2005年11月ごろに着陸し、7年間、60億kmに及ぶ宇宙の旅を終えて、その土壌サンプルを持ち帰ったのだから、ぼくのように少し科学に関心を持つものならば、驚きと日本の宇宙科学の素晴らしさに、快哉を叫ばずにはいられないわけだ。
たとえて言えば、東京から鉄砲を打って、沖縄にあるゴルフ場のバンカーにあるゴルフボールを打ち抜くようなもの、それ以上なのである。
全重量500Kgだから、軽自動車800kgに比べても少し小さいくらいだが、最先端科学の粋を結集した探査衛星で、使われたエンジンは「イオンエンジン」という、これまた世界の最先端を行く未来エンジンなのである。日本の宇宙技術がNASAを越えたといわれるゆえんである。
テレビで「はやぶさ」がオーストラリアに帰還した様子が放映され、若者たちが万歳を三唱し、涙を流す者もいた、あの場面と意義をどれだけの人たちが理解できたであろうか。
これを一部の科学マニアの感傷だと放っておいていいのだろうか。未来に希望を託す若者たちを突き放していいのだろうか。
この「はやぶさ」プロジェクトにしても、予算は、当初17億円であったものが例の「事業仕訳」で7千万円に減額され、さらに今や3千万円である。 プロジェクトは中断を余儀なくさせられているのだ。
日本も今や経済大国2位の席を中国に譲り、韓国のサムスンには日本の電気メーカーが束になってもかなわなくなり、大学新卒生の就職もままならない、何もかもに閉塞感の漂う現状に甘んじていていいはずがない。
日本経済を引っ張ってきた自動車産業ももうぼつぼつ曲がり角に差し掛かっている今、これからの日本の未来を切り開いていくのは、こうした宇宙産業であり、原子力発電など新しいエネルギー技術であり、iPS細胞から創出される再生医療技術、環境技術である。
アメリカの宇宙産業は軍事面と深く結び付いていて、その成果が世界最大の武器輸出国になって跳ね返り国の財政を潤し、イギリスも、フランスも今や中国も同じなのである。世界が今最も注目する「武器輸出国家北朝鮮」をはるかにしのぐ武器輸出国なのである。
軍事産業が国の産業技術を先導し、発展させ、国家の財政を潤しているのは紛れもない事実であるが、日本はそういうわけにはいかない。
そうした中、「はやぶさ」の成果は、これからの日本の歩むべき方向を指し示しているだけでなく、今の若者に勇気を与え、希望を持って世界に伍していける未来産業の端緒になるのである。

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