予備校の教師を辞めてからは、もっぱら家庭教師や自宅に呼んでの個人指導という形が多くなったわけだが、そのせいか、程度の差はあれ何らかの精神疾患を抱えている生徒に出会うことが多くなってびっくりしている。
「そのせい」といったのは、こうした精神疾患を抱える生徒はやはり集団指導にはなじめないから個別指導を望むんだろうし、いきおいそうした生徒に出会う確率は高くなるだろうから、この自己体験をもって若者一般に一般化しすぎてはいけないという自重を込めて言ったわけだ。
が、しかし、事情はそうではないようだ。
20代から40代前半の子を持つ友人、知人が多くなったが、そうした友人、知人の中にも精神疾患を抱えた子を持って悩んでいる人が少なからずいるし、各種統計を見ても精神疾患の患者数は確実に増え続けている。
ここでいう精神疾患とは、統合失調症や躁うつ病といった重度のものから、神経症、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの様々な疾患を指すわけだが、もっと軽症の睡眠障害だとか、家庭内暴力、イライラ感、いわゆる「キレやすい」まで含めると、心を患っている若者は相当数いるのではないだろうか。
原因をいつも考えるんだが、様々なことが考えられ、これがという決定的な原因があるわけではなく、それらすべてが複合的、重合的に絡み合っているのだろう。
そんな中でも明確に思い当たるのは、今の若者たちの子供時代と我々の子供時代とでは「遊び」の質がまるで違うということだ。
我々の子供のころは、学校が終わると一目散に家に帰り、学校のカバンを家に放りこむのももどかしいくらい、玄関を飛び出すと近所の子らと道いっぱいに広がって遊んだものだ。塾なんてものはないし(あったのかなあ?)、道に車が通るわけでもない、町のいたるところ、ことに道には子供たちがあふれかえっていた。日が暮れるまで、子供たちの声が町中にこだましていた。
女の子のことはよく知らないが、女の子は女の子でいろんな遊びをしていたし、男の子らは、駆逐本艦、探偵ごっこ、缶けり、肉弾戦、蹴球、胴馬、べったんにビー玉、数え上げたらきりがない。ともかくよく遊んだし、喧嘩もした。
そう、玄関を出たすぐ前の道が遊び場だったということが今とは全く違う点だし、おけいこ事、塾なんてのはあったのかなかったのか、そんなことを気にかけている子なんか、知る限り誰もいなかった。
子供たちもそうだったが、大人たちにとっても道は最大の交流の場だった。時には近所同士が大喧嘩していることもあったが、1週間もたてばその喧嘩相手同士が晩のおかずのやり取りをしている。
今はどうだ。道という道は車であふれ、遊ぶどころか歩くのも命がけだ。家にいても外から聞こえてくるのは車のエンジン音と警笛ばかり、子供たちの素っ頓狂な声なんて遠の昔に聞いただけ。
遊びの質が変わったのは、道が変わったからだ。
今や道は子供たちを分断し、家に閉じ込め、唯一「塾」が子供たちの集う場になってしまった。
そしてこの「塾」も大人たちはどう考えているんだろう。
大人たちは週40時間労働が普通になってきているこのご時世に、子供たちの学校や塾そしてお稽古事の拘束時間は週40時間をはるかに超えている。まるで装いだけを明るくした「蟹工船」だ。
社会全体が子供たちを虐待しているという自覚がまるでない。
これでは気が変になるのは当たり前。まっとうな子ほどおかしくなる。
そして、こんな環境でもめげず「勝ち組」になった子供たちの中に、大きくなると、みなさんご存じのとおり、国民の血税にたかる高級官僚や、「国民の皆様」、「国民の皆様」とやたら偽善者ぶる政治家が多く生まれる。
道の機能が変わり遊びの場が変わったことが、遊びの質を変え子供たちの生活を変え、心に傷を負う子供たちも増えた。これもまた一因だろう。
明日は、「双極性Ⅱ型」とへぼ心療内科で診断された生徒の進路相談に乗ることになっている。
shouさまへ
今日は暑かったですが 窓から入ってくる風に救われました。
只今、ブログ読ませて頂きました。 予備校の先生をされておられたのですね。
不思議なるご縁に導かれて、ありがとうございます。
今月末から 発達障害の子供たちの学習支援のボランティアをします。
仕事の帰りに週1回ですが・・・
もしご縁がありましたら、私のパソコンアドレスにて 色々知恵を頂けたら嬉しいです。
私は教師の資格を持っているわけでもなく、保母の資格を持っているわけでも
幼稚園の先生の資格、ピアノの先生の資格、お習字の先生の資格、教育界に身をおいているわけではありません。 私の生い立ちからこの50年を生き抜いて、何故だか分からないのですが 心の奥深くから込み上げてくるものがあり 突き動かされています。だけれど、気持ちだけでは活動を維持できるか不安になってきます。
このお話を伺って なんだか心が温かくなりました。ご縁がありましたら、私のパソコンアドレスへ遊びに来られて下さい。よろしくお願いいたします。 お待ちしています。
いずみ