昨日(2016年3月4日)車に入れたガソリン1ℓの値段である。
この価格、実は40年ぶりの安値と聞いたら驚かれる方が多いだろう。
ガソリンの価格統計がとられ始めた1966年(昭和41年)のリッター50円から始まって、1973年(昭和48年)には、それまで6~7年かけて60円に上昇していた価格が第一次オイルショックのあおりを受けて急高騰を始め、4年後の1977年(昭和52年)にはそれまでの2倍の価格120円前後にまで上昇したのである。リッター93円はその途上に付けた価格で1975年(昭和50年)頃の価格なのだから、実に40年ぶりということになる。
第一次オイルショックといえば、直接原油価格とは関係のないトイレットペーパーや洗剤などの買占め騒動を皮切りに、買いだめは砂糖や醤油などにも及び、スーパーでは開店と同時に商品が売り切れる状態が続いた。エスカレーターの運転は中止され、テレビは深夜放送が自粛され、ネオンサインが早い時間から消灯したり、日曜日にガソリンスタンドが休業するなどの社会現象が起き、日本全体が戦後最大の大混乱に陥った。これにより戦後から続いていた日本の高度成長期が終わりを迎えるのである。
石油もあと40年もすれば枯渇すると真顔で語られたのもこの時だ。さあ大変だ。原子力発電をもっともっと促進しなきゃ日本はだめになる。1971年に開始された福島第一原発にもいっそうの期待がかかることになる。
1979年(昭和54年)には、日本が石油輸入先として依存していたイランに革命が起き、石油の生産をストップしたため、またまた第二次オイルショックに遭遇。1982年(昭和57年)には、ガソリン価格が過去最高のリッター177円を記録したのもこの時だ。
日本はこうして第一次オイルショック、第二次オイルショックという大波にも何とか耐え忍び、やがて1980年代の資産価格上昇に牽引された好景気、バブル景気に酔いしれることになるが、バブルはバブル、なんとも手痛いしっぺ返しを受けることになる。
2000年代、21世紀という新たな世紀に入り、バブル崩壊による後遺症は癒えないまでも、何とか立ち直る気配を感じ始めた2007年(平成19年)、今度はアメリカの住宅バブル崩壊に端を発したリーマンショックによる国際的な金融危機に日本はまたまた足元をすくわれるも、我がバブル崩壊でできた免疫性が効いたのか、大過は免れた。この時、2008年8月に付けたガソリン価格が史上最高価格のリッター182円である。
今車を利用されている方のガソリン価格は130円から150円という感覚の人が多いのではなかろうか。90円代を記憶されている方はもう年配だ。
リッター50円から始まったガソリンの価格推移は世界情勢に大きく左右され、高値は上に述べたとおり、記録的安値も1979年2月のリッター100円、1999年5月のリッター97円はあったが、93円は異常といってもいい安さである。
これが何を意味するのか。
イスラム圏を中心としたさまざまな混乱。アメリカ、アラブ、ロシアを巻き込んだ資源外交の暗闘。石油、天然ガス、原子力といったエネルギー資源をめぐる駆け引き。21世紀の世界は、戦争に明け暮れた20世紀以上に不安定な要因をはらんだマグマがうごめいていることを感じる。