真田 泰昌 について

長年予備校の教師をやってきました。パソコンとの付き合いは古く,1号機からの付き合いで、プログラムもすべて自前でした。日本語もカタカナがやっとという時代でしたから,今はもう浦島太郎もびっくりです。

紫陽花や 善峯寺の 仏たち

Yoshimine-dera Temple located west of Kyoto City is known as the Flower Temple.  Cherry blossoms in spring and autumn leaves are particularly beautiful, but it is also emotional to look at the landscape of Kyoto while watching the hydrangeas.

京都市の西南の小高い山の中に善峯寺(よしみねでら)があります。えっ、ここが京都市?と思えるほど京都の市街地からは離れた山の中です。西国三十三カ所第二十番の札所でもあります。

ブームなのかウィークデイにも人が絶えず、白装束に身を固めた巡礼者も多く、ここでも外国人の姿がよく目立ちます。春の桜、秋の紅葉は見事で、土日には行列ができるほどです。

今は紫陽花で、京都でも一、二を争う規模で、咲く紫陽花はなんと一万もあるそうです。まだ満開にはなっていないせいか、雨模様のせいか人も少なく、それでも一面に咲いた紫陽花が、まるで仏さんのように出迎えていただきました。

関西にはこうした紫陽花寺も多く、梅雨の最中にも色とりどりの傘を差して人が押し寄せ、紫陽花と妍を競うかのようで、これもまた面白い風景です。

関西はまだ梅雨入りが宣言されていませんが、ひんやりした風の中に梅雨のにおいがします。

趣きを 変えて見直す すみれ草

Pansy is the most common flower among flowers.  Pansy is always planted in the park and amusement park where flowers are blooming.  It’s too common and no one cares.  However, when you put it in a glass cup and look at it like this, there are no such cute and beautiful flowers.

すみれ草ではなく、本当はパンジーですね。

紛らわしくてよく似た花にビオラもあります。スミレ、パンジー、ビオラを一括りにしてスミレと言いますが、元は野性のスミレを改良したのがパンジーであり、ビオラです。

芭蕉の有名な句に「山路来て何やらゆかしすみれ草」というのがありますが、江戸時代のこの頃にはもちろんパンジーやビオラはありません。芭蕉の見たスミレは紫色の小さな野生のスミレです。

大きさで言えば、スミレがいちばん小さく、次にビオラ、いちばん大きいのがパンジーです。

いずれにしろ、パンジー、ビオラは公園にも遊園地にも花があれば、必ずあるというほどありふれた花になっています。丈夫で、育てやすく、価格も安いということから、家庭のプランタンでもよく見かけます。

ほとんどの人はパンジーやビオラが植わっていても振り向きもしません。その点、スミレはどこにでも見かける花ではありませんので、野山で見つけたら写真にも撮られます。

今日は近くで摘ませていただいたパンジーをグラスに挿しました。満悦です。

花嫁が カサブランカに 託す夢

Casablanca is often called the Queen of Lilies.  It is also often used for bouquets that the bride has in hand.  It originates from Casablanca in Morocco.  “Casa” means white, “blanca” means home. It is perfect for the image of flowers full of exoticism.

カサブランカはユリの女王と言われます。花嫁のブーケには最もよく使われ、純白の甘い香りがするユリです。

もとは日本の鹿児島県トカラ列島に自生していたタモトユリを、オランダの育種会社が改良して売りに出され、瞬く間に世界に広まりました。1993年には、世界で最も権威のあるイギリスの王立園芸協会からガーデン・メリット賞を受賞しました。

名前の由来は明確なものはありませんが、おそらく映画『カサブランカ』に誘発されたものと思われます。1941年、地中海に面したフランス領モロッコのカサブランカを舞台にした映画です。

ハンフリー・ボガード、イングリッド・バーグマンが主演し、アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞の3部門で受賞しました。リック(ハンフリー・ボガード)がイルザ(イングリッド・バーグマン)に向けた言葉「君の瞳に乾杯!」は当時一世を風靡し、日本などでも戦後上映されて、はやり言葉になりました。

カサブランカの「Casa」は白いという意味で、「blanca」は家という意味で、紺碧に地中海に白い家々が並ぶイメージは、ユリの花、カサブランカとオーバー・ラップします。

ちなみに、トカラ列島のタモトユリは乱獲のせいで絶滅しました。悲しいことです。

紫陽花に 宿る五色の 甘露かな

The night dew accumulated in hydrangea is illuminated in the morning sun and is dyed in various colors. This is just the sweet-dew given by God.

別に梅雨を待ちわびているわけではないが、6月も半ばだというのに大阪はまだ梅雨入りが発表されていない。

関西・近畿圏の過去のデータを調べてみたら、最も早い梅雨入りは1956年と2011年の5月22日頃で、最も遅い梅雨入りは1958年の6月25日頃そうだ。昨年(2018年)は6月5日で、一昨年(2017年)は6月20日だそうだから、かなりばらつきがあり、今年が特に遅いというわけではなそそうだ。

4月1日に令和元年を迎え、5月初めの10日間の大型連休、連日30度を超す異常な夏日、また国では雪が降ったりで、まるで1年が短期間で巡ったような4月、5月、6月だったので、頭も混乱しているのかもしれない。

連日話題になっている年金老後問題や高齢者の車事故など、わが身にも詰まされることが多く、これも拍車をかけているのかもしれない。

散歩道で目にする花々、公園に出かけて見る季節の花だけが、確実に時の流れを追っていて、心の慰めにもなっている。

紫陽花と 川面に映る 柳かな

Hydrangea flowers are blooming along the street canal. Fresh green willows are reflected on the river surface, and they are swaying in a cool wind.

時々雨も降りますが、爽やかなお天気が続いています。ウメの実も、ジャガイモも収穫を終える時期になりました。

街中の花壇の紫陽花はほぼ満開。近くの公園にある「あじさい園」は、少し山手にあるせいかやっと開花し始めたばかりです。

このままこのお天気が続いてくれれば有り難いことですが、そういうわけにはいきません。梅雨が来て雨をどっさり降らせてもらわなければ困りますし、暑い暑い夏も来てもらわなければなりません。

最近とみに増えてきた「異常気象」もたまたま起こった異常なのか、深刻な原因によるものなのか、なかなか見極めが難しいですが、深刻な原因によるものの気がして心配です。

「老後2千万円」問題も深刻です。黒いフェルトの帽子を目深にかぶり、いなせな恰好で颯爽と歩く麻生財務兼金融の舌足らず大臣の浅読み発言に端を発した今回の「老後2千万円」問題は、深刻さがいっそう増し、身近に迫りつつあることを再認識しただけで、早くから心配になっていたことです。

4,5年前の「流行語大賞」にノミネートされて話題を呼んだ「下流老人」がまたスポットライトを当てられた感じですね。

国会論戦を見ていても、与党はふにゃりふにゃり、言いつくろいに終始し、野党は例によって威勢はいいものの、何といってもあの小党分立ぶりでは、与党をぎゃふんと言わせるだけの実力がない。

やっとの思いで木戸銭を払って天井桟敷で見ている「下流老人」ももう溜息しか出ません。

可愛さが 心に留まる さくらんぼ

There are many fruits but cherries are loved by everyone.  Why?  Reasonable round shape, bright red color and taste and texture when eaten, it must be because it is cute and delicious.

最近、「いちご狩り」とか「さくらんぼ狩り」と言って、ビニルハウスの大掛かりな果樹園が盛況です。

温度や湿度をコントロールでき、果物に最適な環境を人工的に作ることができ、立ったままイチゴらサクランボを取ることができますし、蜂や毛虫の心配ないということで子供たちも安心して楽しめます。特に都会生活者にとっては身近にこういう施設があれば、楽しいですね。

イチゴとサクランボと言えば、可愛い果物の代表ですが、皆さんは「イチゴ派」ですか「サクランボ派」ですか。

子供たちの間では人気を二分するそうですが、サクランボはイチゴほど馴染みが少ないせいか、珍しさもあって若干サクランボに興味を示す子供たちの方が多いそうです。

イチゴは肌も少しざわざわしていますし、大きさもまちまちですが、サクランボは肌もつやつや、ほっぺやくちびるに似ていて可愛さの点ではサクランボ派に軍配を上げたいですが、いかがですか。

お目当に 見つけて嬉し 草苺

I found a wild strawberry in the place I expected.  I felt very happy.  I was involuntarily humming “the song of the wild strawberry” which I sang often when I was a child.

野イチゴにもいろんな種類があります。写真のクサイチゴは最もポピュラーで、ほかに、ニガイチゴ、モミジイチゴ、クマイチゴ等々。

ヘビイチゴも野イチゴの一種です。ヘビイチゴは別名ドクイチゴとも呼ばれますが、別に毒があるわけではなく、食べられますが、美味しくありません。だから、ヘビイチゴといって他のイチゴと区別したのでしょう。

ヘビイチゴ以外はそれぞれ独特な味と風味があってジャムなどにして食べます。

野イチゴと言えば思い出すのは「野いちごの歌」です。フィンラン民謡を原曲にして日本でも広く歌われ、小学校では必ず習ったものです。ソ連の作曲家ショスタコービッチも組曲の中に取り入れ、これが日本の「野いちご」に影響したともいわれています。

今はイチゴも栽培種では品種改良が進み、一口では食べられないほどのかなり大粒のものが売られていますね。

「野いちご」という名にノスタルジアを感じるわけですね。

 

くちなしの 白さに耐えて 歌う人

Pure white flowers are blooming in a hedge along the road. Looking at these white flowers, most people remember their days when they had pure hearts.

道路沿いの生け垣に真っ白いクチナシの花が咲いています。濃い緑の葉がその白さをいっそう際立たせます。

いつだったか、人の寄り合いで、デュエットで「くちなしのうた」を歌っていた一方の男が、突然涙をぽろぽろ落とし始め、それにつられて相方の女性も涙をぽろぽろ。まわりがしーんとなったことを思い出しました。

クチナシの白さを思い起こし、皆それぞれがそれぞれの人生を思い返したに違いありません。どのような人生を送ってきたのか、しかし原点は皆同じ。

今こうしてクチナシの花を見ていても、あのカラオケに集った人たちと同じ思いが沸き起こります。

蜂誘う 花魁姿の フェイジョア

Feijoa is not so common in Japan.  In New Zealand and Australia, it is grown abundantly because it is processed into yogurt and ice cream.  Feijoa tea is especially popular.

フェイジョアは日本ではあまり見かけません。ニュージーランドやオーストラリアではフェイジョアの実をヨーグルトやアイスクリームに加工するため一般家庭でもよく使われています。中でも実を乾燥させて作るフェイジョア・ティーは香りがいいので愛飲されています。

日本には、キーウィフルーツと同時期に持ち込まれましたが、フェイジョアは結実に難点があるため普及しませんでした。

日本の果物にも、りんご、桃、梅、さくらんぼ、栗など、フェイジョアと同じように、自分の花の花粉を雌しべに付けても実がならない実(自家不結実)はたくさんあります。

りんご、桃などは長い年月をかけて実が成り易くなったのですが、フェイジョアは外来種で歴史が浅く、キーウィフルーツほどの人気が無かったので、普及しなかったのでしょうね。

自分の花の花粉を雌しべに付けても実がならない植物は、同じ品種のものをもう一本植えることで実がなります。その花粉を運ぶのが蜂や鳥です。その鉢や鳥の目を引く為にこうした植物は目立つ花を咲かせ、香りをつけるんですね。

人間もどこか似ていませんか。

夏陽射し 疎水も涼し 杜若

The sun is particularly strong on sunny days before the rainy season. On such a day, Kakitsubata are opening the flowers in the water channel. I feel cool just looking at this scene.

梅雨前の晴れ間の日差しは特に強く感じます。先だっての連日30度を超すようなことはなくなりましたが、日差しは完全に夏です。街中を流れる疎水にカキツバタが一群れ涼し気に咲いていました。汗をかきながら通り過ぎて行く人もひと時の清涼を感じているに違いありません。

カキツバタと言えば思い出すのは伊勢物語ですが、業平が見たカキツバタはもっと紫が濃く、花の先が尖っていたものです。

「何れ菖蒲か杜若」と言われるように、ショウブ、ハナショウブ、アヤメ、カキツバタ、どれもよく似ていて、よほど関心を持っていない限り見分けが着きません。カキツバタはそんな中でも比較的見分けが着きやすいのは、こうして水辺に咲くからです。

カキツバタも今では何種類もあって、写真のカキツバタは「ヒオウギアヤメ」という名のカキツバタです。最後に「アヤメ」が付くから、また混乱します。アヤメは大概乾燥した土地に咲きますから、カキツバタではありません。

さほど暑くもなく、凌ぎやすい天気が続いていますが、来週あたりから各地で梅雨入りということになるでしょう。鬱陶しいと感じる向きもあるでしょうが、これこそ日本を特徴づけるもので、自然にも心情にも「湿潤で潤い」をもたらします。