真田 泰昌 について

長年予備校の教師をやってきました。パソコンとの付き合いは古く,1号機からの付き合いで、プログラムもすべて自前でした。日本語もカタカナがやっとという時代でしたから,今はもう浦島太郎もびっくりです。

薔薇園で 紅葉に染まる メールあり

Even though autumn roses are just beginning to bloom here, e – mail full of red leaves has reached from my friend.

秋の薔薇が咲き始めました。春の薔薇のような絢爛さはありませんが、しっくり景色に溶け込んで、これはこれでまたいいものです。空気も澄んで、そのせいか、香りが春の薔薇よりもストレートに漂ってきます。

そんな時、一通のメールが届きました。赤城山麓の秋の風景です。すっかり紅葉して秋真っ盛りの様子です。

ここ関西では、山深くはともかくとして、京都、奈良、滋賀などの紅葉処はやっと色づき始めたところで、この写真のような紅葉は一ヶ月は先です。

しかし、今年は例年になく秋の訪れも早く、各地の冷え込みが厳しいとのニュースが流れています。紅葉の見頃も早くなるかもしれません。

そういえば、我が家でももう電気コタツを出していますから、いつもなら11月の掛かりくらいだと思いますから、早いんでしょう。歳のせいもあるんかもしれませんがね。

記録破りの猛暑あり、記録破りの秋の訪れ。何が何だか分からない一年です。

昼は銀 夕は黄金の 枯れすすき

Kare-susuki, which was shining silver in the day, is shining gold with the sunset.Thus autumn will gradually deepen.

和歌山県の有田川町と紀美野町との境界に広がる「生石(おいし)高原」(山腹に高さ50mの巨岩があり、これが大石「おおいし」、「おいし」となったとか)は、関西随一といわれるススキの名所です。

主峰、生石ヶ峰(標高870m)の裾に広がる大草原は広さ13ha(甲子園球場10個分)にもおよび、毎年秋になると一面がススキに覆われ、大勢の行楽客やカメラマンで賑わいます。

とくに夕日を受けてススキが黄金色に染まる頃は最高で、元日の初日の出とともに人気を二分するほどです。

写真は夕方5時過ぎくらいに撮ったものですが、やがて日が沈み、夜の帳が降りる頃には満天の星が煌めき、眼下の有田市の夜景と相まってもう別天地です。

とともに、深まりゆく秋になんとも言いようのない寂しさがよぎるのも事実です。

朝見たNHKのドラマ「まんぷく」の咲姉ちゃんの最期の場面が、余りにもリアル過ぎてずっと頭にこぶり付いていたからかもしれません。

コスモスが 見下ろす紀州 有田川

You can see the Pacific Ocean and the Arita River flowing into it from Washigamine (586 m altitude) of cosmos’ full blooming. It is truly a big panorama.

蜜柑で有名な和歌山県有田市の鷲ヶ峰(標高586m)山上にはコスモスが一面に広がっています。

遥か向こうには太平洋に繋がる紀伊水道が広がり、沈みゆく夕日と水平線の彼方には四国が浮かんでいます。照り返しの眩しいこと。眼下には高野山を水源とする有田川がくねり、それに身を寄せるように有田の町並みが一望できます。

土曜日ということもあって山上の駐車場は満杯。待機すること小一時間。まさかこんなに人が押し寄せているとは想像もしませんでした。

途中、車のカーナビよりも信頼しているスマホのグーグルナビのお陰でとんでもない道に迷い込み、一時はどうなることかと。車一台がやっと通れる山間の藪道で悪戦苦闘。思いを遂げるには並大抵なことではないことを実感した次第です。

でも来た甲斐は十分にあるほどの景観にしばし酔いしれる一日になりました。

美味いけど 種プイプイの アケビかな

When entering satoyama, many fruits of Akebi are growing ripe and the sweet scent is drifting around here and there. I ate one at once. It is delicious, but it is hard to eat because there are many kinds of seeds.

里山を歩いていると甘い香りが漂ってきました。藪を少し分け入ったところにあけびの実があちらこちらにぶら下がっていて、弾けているのも沢山あります。

さっそく一つをもぎ取って食べました。食べたといっても、いつもそうですが、甘くて美味しいのですが種が多くてとても食べ辛い実です。便秘に効くといって種ごと食べる人もいるそうですが、ぼくはだめです。

街中の店頭では見かけませんが、道の駅などでは時々見かけることもあります。

アケビは漢字では「木通」と書きますが、蔓性で中に空洞があるからこう言ったそうで、道の駅などにもアケビの蔓で編んだ民芸品を並べているところもあります。

「木通」は漢方薬としても知られ、オシッコやお乳の出を良くするそうで、他の漢方薬とも合わせて使われています。

露払い 運命(さだめ)に任す 女郎蜘蛛

The spider stretches the net and has been still waited for food even after the morning dew has disappeared. Its appearance seems to leave her fate to Heaven.

朝露が残る早朝、散歩道の脇に女郎蜘蛛が大きな網の巣を張っていました。体長2cmくらいの大きいやつです。もちろん雌で、オスは直ぐ側にいて、体長7mmくらい。たぶん交尾のチャンスを待っているのです。というのも、雌は網に掛かる生き物はことごとく食べ、たとえ同種の雄でも食べてしまうからです。

雄は雌に感知されないようにひたすらそのチャンスを待ちます。雌が網にかかった餌を食べるのに気を取られている瞬間に交尾するのです。交尾したあとはどうせ雌に食べられてしまう運命なのですが、交尾は果たさなければなりません。

カマキリも同じです。餌を容易に得られないこうした生き物は雄を食べることによって栄養にし卵を生みます。

10年ほど昔。セアカゴケグモが日本に上陸して話題になったことがあります。水際で拡散を防ごうとしたのですが、結局は日本国中に広まってしまいました。

ちょうどその頃、就寝中に手の甲を何か虫に刺され、朝起きたら腕中が真っ赤に腫れていて病院に駆け込んだことがあります。セアカゴケグモに刺されたのです。幸い雄だったようで、雌なら血清注射をしなければならないところだと医者に聞かされびっくりしたことがあります。

このセアカゴケグモ、漢字で「背赤後家蜘蛛」と書くとわかりやすいですが、セアカゴケグモの雌は背中が赤くて大きく、交尾したあとはその雄を食べてしまい、後家さんになるので付いた名前です。雄は雌の何分の一かで、ひたすらメスを求めてさまよい歩き、巡り合った雌と思いを遂げた後は雌に食べられて死んでしまいます。

何だかせつないお話になりましたね。

 

清流に 触れて煌めく 実むらさき

Purple fruits of Murasakishikibu are glittering brightly by touching the clear stream. Only sound of babbling echoes around.

里山を奥に辿るともうそこは別天地です。せせらぎの音を頼りに近付いてみると清流のそばにムラサキシキブが赤紫の実をいっぱい付けて頭を垂れ、枝先が流れに触れて震えています。

ムラサキシキブといえばすぐ思い浮かべるのは紫式部。誰が名付けたのか。紫式部を思い浮かべて名付けたのか。いずれにしろぴったしイメージが重なります。

どういう思いで式部はあの長編小説を書いたのか。光源氏を取り巻く女性たちの運命に自らの儚さを写し描いたのか。

日が当たればキラキラと輝き、日が曇れば重く頭を垂れ、やがて実も朽ち果てて深い冬の帳に消えてゆくムラサキシキブ。

生きとし生けるものの運命がこの山里にも一年という歳月の中で巡っています。

キクイモを 見ると湧き出す インスリン

Flowers of Kikuimo have bloomed. They look just like chrysanthemum. The rhizomes contain ingredients effective for diabetes.

キクイモの花が咲きました。キク科の植物で花は菊そっくり。根茎はショウガのような芋ができるのでキクイモ(菊芋)となったんでしょう。

北米産の植物で江戸時代末期に日本に入ってきたというからもうかなり古い外来種です。当初は家畜の飼料として利用されていましたが、一部人の食用にも供されていましたが、戦時中には食糧に多く利用されたようです。そのうち糖尿病に効くことが知られるようになり、民間療法にも使われるようになりました。

糖尿病は、日本では戦後の食生活が欧米化によって急速に増え、今では1000万人を越える患者がいます。世界に至ってはその数は4億人を越え、20年後には7億人を越えるだろうと予測されるほどの勢いで増え続けていて、11月14日を世界糖尿病デーとして、糖尿病に対して注意を喚起しているほどです。

膵臓で作られたインスリンによって血液中の糖分が調整されていますが、糖分を取り過ぎたり、インスリンの量が少なかったりすると血糖量が増え、生活基礎エネルギーを超える糖分は脂肪に変えられて体内に保存されます。それが肥満の原因になり、内臓脂肪の原因になって、様々な病気を引き起こします。

キクイモにはイヌリンという物質が多く含まれていて、血液中の糖分を減らし、インスリンを補助する働きがあるため糖尿病には有効ということになるわけです。まだまだ認知度は少ないですが、今注目されている健康食品の一つです。

タマスダレ 囃子太鼓に そよと揺れ

White rain lilies blooming beside the road where the Danjiri pass by rapidly is swaying to the festival music.

タマスダレは夏の季語です。

真っ白い花が珠、細長い葉が簾に見立てて珠簾。暑い夏には実に涼しげで、いかにも夏にふさわしい植物です。

しかし、実際には9月から10月の上旬にかけて花は咲き続け、夏から秋にバトンタッチする花として俳句でもよく歌われています。

この頃のタマスダレはさすがにちょっとお疲れ気味で、花の色もあの夏の純白とは言えない色あせが見られます。

このところ、各地で残暑がまた記録破りの報道がありますが、タマスダレが咲く道をだんじりが勢いよく通り過ぎて行くミスマッチがまた面白い。

こうして段々と秋が深まって行くのだと思うと、だんじりの囃子太鼓とタマスダレが妙に結びつき、またまた盛者必衰の言葉が蘇ります。

 

だんじりの 地響き越える 鬨の声

Danjiru turns around the corner while roared the grounDanjiru turns around the corner while roared the ground. And when finishing to turn around it, great cheers of success go up more louder than the roar of the ground.d. And when finishing to turn around it, great cheers with success break out more.

岸和田のだんじり祭りは海側が九月祭礼、山側が十月祭礼と、二回にわたって行われます。

マスコミに取り上げられるのは九月祭礼の方で、この6日、7日に開催された十月祭礼はあまり知られていません。近隣の市町村でもこの時期に祭礼が多く、九月祭礼はその先陣を切るという意味からよく知られているのかもしれません。

日本の三大喧嘩祭りに数え上げられるほど荒っぽい祭りとして有名でしたが、今は女の子や子供も多く参加することから安全第一を基本に催されるので大きな事故も起こりません。

「やりまわし」と言って、通りの角を勢いをつけて回るのが最大の見せ場で、だんじりの屋根で団扇を持った棟梁方が跳ねながら指揮を執り、回り切った時にはだんじりを引く者も、周りの観衆も一斉に歓声を上げます。

だんじりは町内ごとに持っていて、一台3億円くらいそうですから町内の一大財産です。

町内ごとにある氏神さんに五穀豊穣の願いと感謝をささげるのが起こりで、町内の結束を深めるのに大きな役割を果たしています。田畑の耕作は一人の力ではできません。近隣の人たちの協力と水利の公平な利用によって収穫を得るわけですから、こうした祭礼は欠かせないものだったのです。

秋桜(あきざくら) 名前を返せと 狂い咲き

In Japanese, we write as ‘autumn cherry’ to say cosmos with kanji. So I am worried about the way how to express the real autumn cherry.

このところ涼しい日が続いていたのに、台風の影響で、全国各地で真夏日を記録する所が続出。それもあってか、桜の開花があちらこちらから聞こえてきます。

なるほど、四季桜といって春にも秋にも花開く桜はあることはありますが、本来春にしか咲かないはずの桜が咲くから狂い咲きといわれるわけで、ニュースに出てくるのもそういう桜なのでしょう。

その桜を見かけて作ったのが今回の句ですが、書き出しに「秋桜」と何も思わずに書いたのですが、よく考えてみたら「秋桜」と書けば普通にはコスモスを指すわけで、これは面白い、と書き直したのが上の句です。理屈っぽくて遊び半分の句ですから、果たしてこれが俳句になるのかどうか。

それでは秋に咲く桜を何と呼べばいいのか。「秋の桜」くらいが妥当ではないかと考えますが、これから秋の桜も常態化しないとも限らないわけですから、コスモスには悪いけれども、やはり秋に咲く桜は「秋桜」、コスモスはコスモス、もしくは「宇宙花」にしていただくしかないかなあ、とまことに今日は暇な話題になりました。