尾瀬を訪ねて

尾瀬は一度は訪ねてみたいと思っていた。
以前5月の連休に、東北地方を旅行した際立ち寄った会津磐梯山で、たまたま水芭蕉が咲いていて、ああこのころには水芭蕉も咲くんだと思ったこともあって、今年の5月の連休、気軽な気持ちで尾瀬を訪ねてみることにした。尾瀬の入り口、大清水を目指したが、途中、片品村に「みずばしょうの森」の案内板があったので立ち寄ってみると、意外や意外、かなり広く水芭蕉が群生していてみごとに花を咲かせている。水芭蕉を求めて尾瀬にやってきた人はここに立ち寄るんだろうか、おそらく素通りしてしまいそうな穴場だ。そして肝心の尾瀬はまだ残雪深く、軽装備でしか来なかったもので大清水入口で入山を断念した。
というわけで、この夏尾瀬を再度訪ねることになった。
今回も大清水から尾瀬に入る計画で、最初の宿は尾瀬戸倉の「尾瀬パークホテル」に取った。何時にチェックインできるのかわからないので夕食は予約していなかったが、予定より早く到着したのでさっそく夕食を申し入れた。すぐにはOKは出なかったが、間もなく準備ができたというので食堂に入ると、とんでもない豪華な夕食。シカ刺しに牡丹鍋の小なべ、山菜におでん、そのほかとてもとても食べきれないほどの料理の数々。いくらの夕食だろうと心配になったくらいだ。翌朝チェックアウトする際に宿泊明細を見てびっくり仰天、夕食抜きで予約した料金、いくらだったか、確か8000円足らずといったところだったが、ほとんど変わらずの8000円をわずか出た程度。何か間違いではないだろうかと宿の主人に確認してみると間違いはないという。わからん。神に、いや宿の主人にただ感謝としか言いようがない。
ラッキーと言えば、計画した尾瀬の2泊3日はすべて雨の予報にもかかわらず、どの日も真っ青な青空に夏雲が浮かぶ登山日和。さらに、当初の計画では大清水から尾瀬に入る予定だったが、宿の主人から、大清水からではなく鳩待峠から入山した方がいいですよとアドバイスを受け、結果、これが大正解。大清水に下りてきて感謝、感謝になるわけだ。「先達はあらまほしきこそ」は間違いのない真理であることを実感した。
さて、宿の主人のアドバイス通り、乗り合いタクシーに乗って鳩待峠に向かった。
鳩待峠から尾瀬ヶ原入口の山ノ鼻まで3.3㎞は朝もやが残る林間を下るだけ。ただ先日の豪雨の爪痕があちこちに残っていて、応急処置の木橋や木道がところどころにある。山ノ鼻では鳩待峠でボランティアのガイドから勧めらえた尾瀬研究見本園巡りに加わった。ガイドはボランティアのご夫婦。モウセンコケや池塘(湿原に点在する池)の不思議の説明を受ける。鳩待峠のボランティアガイドといい、ここのご夫妻といい、心のこもったガイドで、これからの尾瀬めぐりがどれだけ楽しくまた心強く思ったことか、本当に尾瀬を愛されている姿に心から感動した。
見本園巡りを終えて、ここからは尾瀬ヶ原のメインコース、牛首分岐、竜宮を通って約6.6㎞、木道をたどる尾瀬ヶ原縦断コースを行く。後に至仏山、前に燧ヶ岳を見ながら湿原に咲く花々、特にこの時期には池塘に咲くヒツジ草(スイレンを小さくしたような花で午後2時(未の刻)に開花するところから由来する名)を求めての遊歩となる。竜宮小屋で昼食。尾瀬パークホテルで作ってくれたおにぎり弁当がまた美味い。ホテルの主人にまたまた感謝。腹ごしらえを終えると再び木道をたどる。道中、清流の橋の影で見かけたイワナ、もう咲ききってクマの大好物になる水芭蕉の実と沼地に残るクマの足跡、緑一色の尾瀬に咲くコオニユリやサワギキョウ、だだっ広い平原にポツン、ポツンと頼りなく立つ白樺の幼木、真夏の太陽も心地よい尾瀬歩きは次の宿、弥四郎小屋まで続いた。




尾瀬を訪ねて」への2件のフィードバック

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