遺伝子検査

「GeneLife2012」という遺伝子検査キッドが話題になっている。
「NHKスペシャル あなたは未来をどこまで知りたいですか~運命の遺伝子~」で取り上げられてからである。
29,800円でそのキッドを購入し、その中に入っている採取ケースに必要量の唾液を採取し発売元に送ると、2か月後の検査結果がメールで送られてくる。
36項目の検査内容が報告されていて、脳梗塞、心筋梗塞、2型糖尿病などの生活習慣病や、片頭痛、痛風、リウマチ、鼻炎アレルギーなど病気の発症リスクがわかるそうで、それ以外にも、免疫力や記憶力、アルコール耐性などの体質、身長や筋力の発達タイプによる運動能力などの特徴的な要素もわかるそうだ。
NHKスペシャルでは、俳優の平岳大がアメリカで1万円で手に入る同様のキッドを購入し検査すると、心房細動のリスクが標準の2倍あるという結果が出てショックを受けたり、アルツハイマーの発症確率が高いということに不安の表情を浮かべたりする場面があるが、まさに遺伝子検査はこれからますます広がる様相である。

1953年にアメリカのジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによってDNAのB型二重らせん構造のモデルが示されて以来、半数体遺伝子が人ならば約31億個の、たったA,T,G,Cという4つの記号であらわされる塩基対で構成されていることが解明され、その遺伝子情報の解読に挑戦することになる。
当初は全情報を解読すること自体が無謀だとさえ思われたが、その後の科学技術の発展で解読可能性が高まり、1990年には15年先を目標にヒトゲノム解読計画が立てられ、1993年にアメリカ、イギリス、日本、フランス、ドイツ、中国を中核にした国際的協力のもと本格始動、その後のコンピュータやその周辺技術の発達と相まって、予定より早く2003年、ワトソン、クリックが予言してちょうど50年目にヒトの遺伝子情報がほぼ100%解読されたわけである。
そして驚くべきことに、こうして10余年かかったヒトゲノムの解読がシーケンス(並んだ順番にデータや手順を処理していくこと)技術の飛躍的発展で今や1日で可能になったのである。

その遺伝子解析技術を応用したキッドが売り出され話題を呼んでいるわけだが、医療現場においても、例えば肺がんであれば、DNAの塩基配列のある個所の通常CのところにAが入ってALK融合遺伝子ができるとその指令によってできるタンパク質はコントロールが利かなくなり、細胞の無制限な増殖つまり癌になる、だからこのたんぱく質を攻撃することによって細胞の癌化を防ぐことができるわけで、そういう薬を開発すればよく、実際、例えば「ザーコリ」という新薬はピンポイント薬剤として肺がん治療で一定の効果を上げている。
こうした医療分野における期待は実に大きいわけで、今までは手の付けようがなかった難病もやがて治癒できる可能性も出てきたわけだ。
しかし人間の欲望はそれだけにとどまらない。
ダイエットに使いたい、肌を白くしたい、何とかタバコをやめたいが、くらいならまだ可愛いが、知能指数の高い子を授かりたいとか、将来オリンピックに出られるようなアスリートに育てたい、世界一のピアニストにしたいが、ということにまで手を伸ばしたら、ちょっと待ってよということになる。
実際、中国では英才児を育てるために、どの才能が優れているかを知るために遺伝子検査キッドを購入する親が増えていたり、その会社までできているそうだ。それどころか遺伝子を組み替えることで理想通りの子供を育てたいという相談が絶えないとか。

そうそう、これなら他愛なくて面白そうですよ。
「祖先遺伝子検査キッド」というのがあって、現代の世界の人々はおよそ35人の母親の子孫で、日本人の95%はその中の9人に起源をもつそうで、それがわかるというキッドです。
どうですか。だから、みんな仲良くしなくちゃあ。
世界のみんなはこの35人のお母さんの子孫だし、われわれ日本人は9人のお母さんの子孫なんですからね。

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