日の出6時過ぎ、気温18℃、今日初めて長袖シャツを着こんでウォーキングに出かけた。あの酷暑がうそのよう。山の端から朝日が頭をのぞかせると、目の前に広がる田圃が金色に輝き、穂先に垂れ下がる朝露が丸くカットしたダイヤモンドのように陽光を屈折している。そこここに咲く彼岸花はスポットライトを当てられた千両役者のように秋をいっそう際立たせ、田んぼの一角になぜかぽつんと立っている金木犀からはあの何とも言いようのない芳香が漂ってくる。目を右に移すと、秋祭りの献灯提灯がもう何十個もずらっと並び、これから始まる今年最後の大騒ぎを控えて、まるで嵐の前の静けさだ。
こうして季節は巡り、秋の風情も昨年と変わらないだろうに、今年の秋もまた今までとは違った秋だ。そうだ、自然は未来永劫変わることなく巡るんだろうが、人が変わり、心が変わるんだ。あんなに元気でいた人が今年はもういないし、別の人は病に苦しんでいたり、そんなことを想うとさびしい秋だし、夜になると遠くから聞こえてくる、秋祭りの練習なんだろう、威勢の良い掛け声や鐘、太鼓の音が日に日に熱を帯びてくるのを聞いていると、また生きる勇気もわいてくる。
塵芥に紛れるもよし、自然に浸るもよし、わが同時代人たちよ、悔いなく生きろよ。