真田 泰昌 について

長年予備校の教師をやってきました。パソコンとの付き合いは古く,1号機からの付き合いで、プログラムもすべて自前でした。日本語もカタカナがやっとという時代でしたから,今はもう浦島太郎もびっくりです。

水蜜桃 捥ぐ手に通う 幼き日

The peach hanging on the tree has matured and the sweet smell is drifting all around. When I harvest it, the feeling of the mother’s breasts in my childhood is transmitted from the harvesting hand.

水蜜桃という言葉はあまり聞かれなくなりました。普通に桃という時には白桃を指します。白桃以外には黄桃があり、桃の缶詰と言えばこの黄桃がよく使われますが、缶詰には缶桃という品種があり、黄桃とよく似ていますので、缶詰の多くはこの缶桃です。黄桃も品種改良が進み、今では白桃と並ぶくらいに美味しい品種が出ています。

白桃も黄桃も元は水蜜桃で、水蜜桃が品種改良されたものです。だから、桃全体を水蜜桃とも言いますが、原種の水蜜桃も改良がくわえられ、今水蜜桃と言えば白桃や黄桃とも区別され高級品種に数えられます。

桃はお盆の供物にもされるように夏の果物です。早いものは6月くらいから店頭に並びますが、水蜜桃は夏の真っ盛り、お盆のころのものが最も美味しいそうです。

木なりのままお盆を迎えたら最高ですが、最近の気候変動や、鳥獣害でこれもむつかしくなっています。

ヒグラシに 心もそぞろ 朝勤行

When I hear the clear cries of Higrashi, I can’t concentrate on evrything at all. Even when participating in the morning religious services of Koyasan Temple, It is only its cry that I hear. Hang you!

お寺の朝は早いです。5時からお勤めが始まるお寺が多いですが、観光客の多い高野山では朝6時起床。6時半から朝勤行、お勤めが始まります。参加は自由ですが、宿泊客の多くの人が参加します。30分から1時間、僧侶の読経に合わせ、手を合わせる人、お経を唱える人、心が澄み渡る時間です。

しかし、ぼくには無理です。朝、まだ白み始めるころから鳴き出すヒグラシの鳴き声が耳から離れません。お勤めが始まるころにはその鳴き声も最高潮に達しますから、お経の声も聞こえません。

「心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ」(俗世間から離れ私心を捨てた私のような身であっても、しみじみとした趣は自然と感じられるものだなあ。鴫(しぎ)が飛び立つ沢の夕暮れよ。)と西行が歌ったように、出家の身でもそうなんですから、私みたいな俗世間の権化のような者にはとても無理な話だと自己弁護に走るわけです。

お勤めが終わり、7時半から始まる朝食のころには、ヒグラシに代わってもうクマゼミの大合唱です。

高野山にもぜひ来てください。

驚嘆と 寂寥綾なす 揚花火

Fireworks festivals are held now in various places in Japan. Fireworks are large flowers blooming in the summer night sky. Every time it is shot up, cheers are coming up. People sympathize with the beauty and fragility.

今日本各地で花火大会が真っ盛りです。どの会場にも大勢の人が押しかけて、夏の夜空に咲く大輪の花のような花火に我を忘れます。

一つ一つの花火の寿命は数十秒。それが連続するから短さを忘れますが、実に儚いものです。美しさと儚さが表裏一体になっているからこそ人は心打たれるのです。日本人の根底に流れる無常観が体現されるのが花火です。

花火の歴史はそれほど古くはありませんし、今のような大掛かりな花火は最近になってからです。

芭蕉にも花火を詠った句はありません。一番弟子の宝井其角に、「一両が 花火間もなき 光かな」の一句がありますが、江戸時代には線香花火程度のものはあったでしょうが、打ち上げ花火のようなものはなかったのでしょう。

芭蕉は17世紀後半に生きた人ですが、18世紀前半に生きた蕪村には、「花火せよ 淀の御茶屋の 夕月夜」ほか2,3の句があり、18世紀後半に生きた一茶になると、「世につれて 花火の玉も 大きいぞ」という句がありますから、このあたりから大玉の花火もあったのかもしれません。

芭蕉やさらの昔の西行や兼好がこんな花火を見たら、どういう句や歌を残したでしょう、と想像するだけでも面白いです。

 

ところてん ヒグラシ聞きつ 峠茶屋

I took a break at a teahouse in the middle of a mountain walk. While listenening to the clear cry of higurashi, I I ate Tokoroten. As soon as I finished to eat it, sweat disappeared from my body. 

今日は8月1日。これからお盆までが夏の最盛期です。気温もぐんぐん上がって35度を突破。猛暑日になりそうです。

8月1日は大阪ではPL教団の花火大会が恒例になっています。教祖の遺言で始まったそうですが、なんでも費用は3億円とか。一夜にして3億円分の花火が打ち上げられるそうです。

PL教団は大阪南部の富田林市にありますが、ビルの屋上や小高い丘の上からなら大阪中から見られます。

大阪の夏を象徴する天神祭りの『水都祭』の花火と並んで2大花火大会ですが、PL教団の花火は別格です。夏の真っ盛り、何万人もの人たちが見守る中、最盛期には10万発から12万発、今は1万発から2万発になっているそうですが、それでも圧巻です。

近くに行くのは大変ですから、少し離れた小山から見ようとは思っています。

湯の峰の 湯音かき消す 蝉時雨

Yunomine Onsen is located at the back of the mountain in Wakayama Prefecture and is Japan’s oldest hot spring.  It was registered as a World Heritage Site as the only hot spring in the world in 2004.  I’m in the hot spring now, but the sound of the hot water will be wiped out by the roar of the cicadas.

昨日、今日と猛暑日が続いています。これでこそ夏!相手にとって不足なしと言いたいところですが、さすがに気温35度を超すとぐったりです。

近くの郵便局に足を運びましたが、往復するだけで汗はびっしょり、のどはからから。汗の出る間はいいですが、これが出なくなると熱中症、よくわかります。

今日の俳句は、何年前だったか、やっぱり7月31日に湯の峰温泉に行った折に作った句です。有名な温泉で、この日も今日と同じくらいに暑く、さすがにこの猛暑では人手も少なかったですが、それでも平日だというのに『つぼ湯』には入れませんでした。

湯の峰温泉は和歌山県の山深く、熊野本宮大社からさらに山に入ったところにある日本最古の温泉です。2004年には世界で唯一温泉として世界遺産に登録されました。古来から熊野詣の人たちが必ずと言っていいほど立ち寄ったせいで日本最古と言われるゆえんですが、私のブログにも書いた通り、それほど熊野信仰は深くて古く、日本建国の謎にも迫るものがあります。ぜひ皆さんも一度訪ねてください。

木苺を 枕に旅の 昼寝かな

Raspberry is growing on the slope of the mountain path. The sweet and sour taste spreads in my mouth when I eat it. Even though the sun is shining, not too hot, I was lying on the meadow and slept for a while.

木苺は木なりのイチゴということで付いた名です。

イチゴも品種改良がどんどん進み、トマトと変わらないくらいの大きさのものまであります。木苺も野イチゴの一種で80種類はあるといわれています。

ヘビイチゴもよく見かけますが、酸っぱいだけで美味しくはありません。街中の植え込みにも時々野いちごができていることがありますが、熟せば結構おいしいものです、

イチゴには夢があり、最近ではハウスでいちご狩りの幟を掲げているところがたくさんあり、どことも子供連れで盛況です。

晴れ間で日は指していましたが暑くなかったので、木苺の傍らで横たわっていつの間にかうとうとしました。

萩も咲き 紫陽花も咲く 夏高原

Not to mention the summer flowers on the plateau in the beginning of summer, the remnants of the rainy season flowers are still blooming, and the autumn Hagi  has already begun to bloom. A scene that is difficult to express is unfolding.

山道を歩いおていたら花弁の大きいガクアジサイが咲いています。季節も季節だし、その大きな花弁にはびっくりしました。しばらく行くと今度は萩です。まだ咲き始めですが、萩と言えば秋を連想しますので、これもびっくり。まだ夏もこれからですが、季節がこんがらがってしまいます。昔からこうだったのか、最近の環境が変わったからこうなったのか知りたいものです。

そういえば、果物しても野菜にしても、アイスクリームもそうですが、全く季節感が亡くなりました。

「人生は芸術を模倣する(Life imitates art)」というオスカー・ワイルドの有名な言葉がありますが、自然が人間世界を模倣したのか、人間世界が自然を模倣したのか、自然が変わり、世界が変わり、諸行無常の理を確信するこの頃です。

飛火野の 涼を扇ぐや 奈良団扇

Nara Uchiwa is a traditional handicraft of Nara. The frame is made of bamboo and an open-workJapanese paper is attached. With this fan, you can convey the cool feeling of the Torino of Nara Park.

奈良団扇は奈良の伝統工芸品で、竹組の骨に透かし彫りの和紙が貼られているのが特徴です。

団扇は西洋にはなく、日本と中国そしてアジアの一部にしかありません。骨組みのなる竹が西洋にはほとんどなく、アジアの一部地域にしかないからです。日本では『竹取物語』にも出てくるように竹の文化が根付いています。

ミュージカル『マイフェアーレディ』でオードリー・ヘップバーン扮するイライザが夜会で団扇をもって現れる場面がありますが、異国情緒をもつアイテムとしては利用されていたようです。

エディソンが電球のフィラメントに日本の竹を利用したことはよく知らていますが、最近はこうした団扇にも関心が持たれebayなどでもよく見かけますし、フローリンゴの素材として竹が注目されているそうです。

 

 

 

白雲に イチゴを掛けて かき氷

If you put red sugar syrup onto the rising gigantic columns of clouds, it may become scraped ice. As soon as you put it in your mouth, your heat will be eliminated at once.

梅雨明けしたとたんに台風。せっかくの夏入りも拍子抜けです。

中心気圧が1000hPaというから全くの豆台風。1気圧が1013hPaで、これが基準ですから、低気圧の発達した程度です。

ただ、風の被害はほとんどないでしょうが、雨雲を巻き込んでいるのでこれが怖い。最近は雨の降り方が尋常ではありません。熱帯地方のスコールにそっくりです。日本は河川が多くて山が近いから降った雨が短時間で町や村にあふれる。土砂崩れが起きる。これが怖い。豆台風が豆台風で収まらなくなることだってあります。

日本はこういう国なんですね。台風あり、地震あり、噴火あり、一年中何が起こるかわからない。心の休まる暇がない。だから平穏な時は、祭りあり、花火あり、野山に海に繰り出したくなる。

世界を見回してもこんなに落ち着きのない国はないでしょうし、こんなにバラエティに富んだ国はないでしょう。

京都や奈良のしっとり感。浅草や千日前の雑踏。北海道や九州阿蘇の雄大な広がり。

台風一過、早く灼熱の夏を取り戻してほしいです。

 

川風に 泳ぐ真夏の 鯉のぼり

When I follow National Route 9 in midsummer, there is a Michi-no-Eki, a roadside station, and out-of-season carp streamers are swimming in the river breeze.  It is a time to relax and forget the tiredness of the trip for a while while eating a chilled Warabimochi.

国道9号線は京都市の中心烏丸5条から山陰地方を抜けて下関駅に通じる国道です。総延長784㎞は国道の中では全国第3位。ちなみに、第1位は国道58号(鹿児島県鹿児島市ー沖縄県那覇市)の884㎞、第2位は国道4号(京都府京都市ー山口県下関市)の836㎞です。

冬は吹雪と積雪でしばしば通行不能になります。今はまだ全通はしていませんが山陰高速道が敷かれ、昔ほどの不便はなくなりました。

夏は、冬と打って変わって、日本海も穏やかだし、昼はそれなりに暑いですが、夜はグーンと気温が下がります。歴史と景色を辿れる道でもあります。

その国道9号線を辿っていると、何という名の道の駅だったか、川筋に鯉のぼりが揚がっています。とても風情があって、ちょうどお昼時でもありますし、冷えたわらび餅が美味しそうなので、それを買って川筋の休憩所でひと休み。

最近は、ここに限らず、真夏でも鯉のぼりが泳いでいる風景をよく見かけます。

お腹がすいていたので、大盛のわらび餅を買ったので最後は大変。夏のことだから、残すのもなんだし、もちろん捨てるのはもったいないし、いけません。頑張って食べきりましたが、もう歩けない。せっかくの風情もあったものではない。

写真とは裏腹な実態に反省しています。