真田 泰昌 について

長年予備校の教師をやってきました。パソコンとの付き合いは古く,1号機からの付き合いで、プログラムもすべて自前でした。日本語もカタカナがやっとという時代でしたから,今はもう浦島太郎もびっくりです。

百合ひとつ 後ろ髪引く 野分きかな

In the forest where the typhoon is approaching, only one white lily is shaking in a helpless manner.

このところ毎週のように台風がやってくるような印象です。百合もぼつぼつ見かけなくなりましたが、散歩道の藪の中に立派な白百合が咲いていました。

百合も最近は種類も多く、色もとりどりです、近くの野山でよく見かけるのはオニユリ、テッポウユリ、そしてこのタカサゴユリです。テッポウユリとタカサゴユリは見分けがつかないほどよく似ていますが、タカサゴユリのほうが少し大きく、頭を垂れています。

オニユリは日本原産ですが、テッポウユリ、タカサゴユリは台湾や沖縄が原産で、ヨーロッパに持ち込まれ、それが日本に入ってきて野生化したという複雑な経緯があります。一時は絹に次ぐ輸出品で外貨稼ぎに貢献したとか。

白百合は色が白い百合をなんとなく白百合といいますが、一般的にはマドンナリリーを指し、古くから聖母マリアに捧げる花として教会花になっています。原産地もヨーロッパやコーカサス、パレスチナですから頷けるわけです。

台風が来てもどうか最後まで咲ききってほしいと願いました。

 

 

草むらに 瑠璃の宝石 ガラニチカ

A navy blue salvia-guaranitica like lapis lazuli of jewel is in bloom in the grass under the autumnal weather.

サルビアといえば夏中赤い花をいっぱいつけて咲くので、園芸にも公園にもどこにでも見かけるポピュラーな花です。この赤いサルビアは詳しくはサルビア・スプレンデンスで、サルビアには沢山の品種があります。

句中のガラニチカ(グアラニチカ)は正式にはサルビア・ガラニチカです。公園の片隅に咲いていましたから見せるたまに植えたものではないと思います。折からの秋晴れのもと宝石のラピスラズリにも負けないくらいの鮮やかな瑠璃色をしています。

毎回毎回思うことですが、植物はどうしてこんなに綺麗な色彩を作り出すんですかね。瑠璃色の瑠璃は宝石のことで、その同じ色のことを瑠璃色と言って、英語では瑠璃も瑠璃色もlapis lazuliなので上の英文では困りました。

ところで、このラピスラズリは人類が初めて使った宝石として、またパワーストーンとしても知られていて、エジプトのツタンカーメンの棺にはたくさん収められていますし、日本の正倉院の御物にはラピスラズリの顔料を使った宝飾類が多数収められています。

乗り越えて やっと実りの 稲穂かな

The rice plants that endured both the hot summer and the typhoon get down the heads and only wait for being harvested now.

朝早くから祭太鼓の音が聞こえてきます。6日、7日のだんじりのお囃子の練習です。全国どこでもこの時期秋祭りが繰り広げられますが、元は稲の無事収穫を感謝してのお祭りです。

今年も梅、桜の開花時期、梅雨入り、梅雨明けのずれ、集中豪雨、記録破りの高温、台風の巨大化と異常発生、どれをとっても想定を超える天変地異の連続でした。それでもなんとか耐えて、全国の稲作状況も指数102で「やや良」だそうですから、ありがたいことです。昔ならこうは行かなかったでしょうから、様々な面でやはり進歩、改善されてきているのでしょう。

古来、食においてはもちろん、税の基本に成ってきた日本では、今でも米の収穫状況はその年の国力を占う指標になっています。食生活も変わり、朝食はパンという家庭も多くなり、米の作付面積もどんどん減って、このままでは米の輸入国になるという危惧もありますが、美味しい米もどんどん増えています。

第三次安倍内閣が発足しましたが、日本の農業政策には今も確としたものがありません。工業立国、IT立国、観光立国も大切ですが、食糧安保をしっかりしたうえでの立国で、最近話題の廃棄食品問題なんかも含め、将来を見越した農業政策をしっかり確立してほしいものです。

いがぐりを 潮風撫でる 岬かな

In the cape where the typhoon has left, the sea breeze gently is stroking chestnuts covered with thorns in the former way.

ここ2日間は台風一過の秋晴れが広がったが、またまた台風25号が発生し、只今北上中とか。今回は日本本島は直撃を免れそうですが、沖縄は相変わらず通過地点に入っているようで、お気の毒なことです。

台風25号は「コンレイ」と命名されたそうですが、最近はあまり知られていないようですね。

我々の世代では「ジェーン」台風はあまりにも強烈だったので、おそらく誰でもが知っています。当時はまだ実質アメリカの支配地域だったので、アメリカの習慣で台風にも名前をつけました。「ジェーン」はもちろんアメリカ女性の名前。日本の「花子」さんみたいに馴染み深い名前なんですね。

アメリカではハリケーン何号と言わず、必ず名前をつけて区別するそうで、大概は女性の名前が付くようです。あのハリケーンや台風の凄まじさは、女性が一旦怒り出したら怖い怖い、その恐ろしさから連想したんでしょうね。女性はどこの国でも怖いんですよ。もっともその原因は大概男性が作り出すんですがね。

ということで、25号は「コンレイ」。カンボジアが命名国らしいです。名前の由来は、カンボジアのある少女の名前らしいです。ちなみに前回の24号は「チャーミー」。命名国はベトナム。名前の由来は、ベトナムの花の名前のようです。

このように台風にはそれぞれ名前がついていて、発生した国に命名権があるそうです。どの名前も魅力的で、あんなに怖い台風とは想像も付きません。

男性諸君、よく心することですね。

秋口の ハイビスカスは 色も澄み

It’s already autumn but hibiscuses are in bloom. It seems to be more vigorous than summer and its color is also vivid.

台風一過。澄み切った青空が空いっぱいに広がっています。拍子抜けの台風24合も予想したほどの被害も出さず何よりです。

また、本庶佑京大名誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞され、慶賀の至り。これで、1901年から始まったノーベル賞の日本人受賞者(日本国籍を持たない方も含め)は27人になります。

日本人初の受賞者である湯川秀樹氏は第2次世界大戦後であり、それ以前にも明らかにノーベル賞受賞に匹敵する業績を残した日本人は多く、おそらく50人は下らないと言われていますが、人種差別的偏見、言葉の問題、その他で受賞を逸してきました。

21世紀になってからは米国に次ぐ受賞者数ですが、さて、これからはどうなのか、ちょっと懸念する材料も多々あるようです。

さて、ハイビスカス。

ハイビスカスといえば熱帯性植物で、夏に咲くというイメージがありましたが、もう10月というのに、こんなに綺麗なハイビスカスが咲いていました。八重咲きでしかも黄色。

実は、ハイビスカスの花期は長く、春から秋までのようです。一つの花は一日か二日の寿命ですが、夏は次から次と花を付けるので、夏の花というイメージになっているようです。

しかし、ハイビスカスは高温には弱く、今年の夏にように記録破りの猛暑続きでは多分、相当参ったようで、だから、こんなに涼しくなった秋口に勢いよく咲いているのかもしれませんね。

黒い実は ソフトに青い クサギ染め

When the white flower of Kusagi becomes red and black fruits are made, it is autumn. This black fruit is used for dyeing.

台風24号も呆気ないほど静かに通り過ぎてくれました。ありがたいことです。

21号と同じくらいの台風だということだったので、朝からスーパーに買い物に出かけたら、パンは売り切れ、牛乳はやっと手に入ったと言う有様。そしてレジに向かったらこれが大変。レジには大行列ができていて、並び始めてから小一時間、やっと買い物ができたという次第。

そしてその帰り道に見かけたのがこのクサギです。

夏は可愛い白い花を咲かせていましたが、今はその花もどぎついような赤さになって黒い実を付けています。なんか不気味な感じさえします。しかし近寄ってこの黒い実はよく見ると青みがかった黒色で宝石の様に美しい。

調べてみたら、花の頃は、昼は蝶、夜は蛾というように蝶や蛾には好まれ、実がなると今度は鳥がよく集まってくるそうだから生き物には好かれているようです。

そしてこの黒い実、青い天然の染色剤としては藍とこのクサギしかないそうです。藍は濃紺に、クサギは淡い空色に染まるそうで、染色に趣味をお持ちの方には結構好まれているいるようです。

実も花も臭いので、花の名の由来でもあります。それでも若木のころは、蝶や蛾や鳥だけではなく、人間様の食用にもなるそうで、お浸しにすると美味いとか。よくこんな臭いものを食用に見分けたものだとまたまた感心させられました。

 

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夏は去り 人影は無く 秋を待つ

Summer has already gone out

there is no people all around here

just wait for autumn now

俳句は最近では外国でも広く知られるようになり、3行詩の「Haiku」は静かなブームになっています。

ブソン青眼、ドウーグル、アーサー・ビナードといった青い目の俳人も排出しているほどです。

日本語の俳句は、季語を入れる、5-7-5音といった決まりが原則ですが、英語俳句は現在形で自由に創る三行詩です。

(1) 簡潔であること、(2) 季節感を出すこと、(3) 2-3-2 音節くらいに纏めること、(4) 固有名詞以外は小文字を使用すること、(5) 切字はダッシュやコロンで表すこと、等など一定の決まりはありますが、原則自由です。

ともかく、世界で一番短い詩で、どれだけ人の心に響くかの詩ですから、いろいろな制約はあっても、外国人にも興味を引き起こさせるのでしょう。

上の英語俳句は、あえて5,7,5の単語で挑戦してみましたが、これも面白いのではないでしょうか。外国の方がどう受け止めるかですね。

秋バラに 引き継ぐ夏の 名残りバラ

The autumn roses will begin to bloom soon. The last roses of the summer are blooming in order to take over to it now.

バラは春バラ、夏バラ、秋バラと3回見頃があります。春だけ咲くバラ、四季咲きのバラ、返り咲きのバラがあり、春バラはすべてのバラが咲くので豪華絢爛です。

夏は四季咲きと返り咲きのバラが咲きますが、花の数も少なく小ぶりなので、特に人目を引くほどではないから、夏はバラが咲くのと思う人もいて、バラは春と秋と思っている人がほとんどです。

その秋バラも春バラに比べると、花の数もボリュームもかなり見劣りしますが、かえって一つひとつの花が目立ち、美しく感じます。香りも秋バラの方が良く、全体的に落ち着いた雰囲気があります。

秋バラのもう一つの特徴は、蔓性のバラはほとんど無く、ブッシュ性のバラがほとんどであるということです。今日訪ねた蜻蛉池公園のバラも、秋に備えて剪定されたものばかりでまだどれも花をつけていませんでした。

写真のコクテール(カクテル)は蔓性のバラで四季咲きですが、夏の返り咲きで、バラ園の入り口だけに咲き残っていました。

秋バラが咲き出すのは10月に入ってからで、ちょっと肩透かしを食らった感じです。

ちなみに、このコクテールは普通にはカクテルと呼ぶのですが、コクテールと格好をつけて呼ぶ人が多く、一重の花びらはバラらしくないのですが、なぜか人気のバラで、世界バラ会議リヨン大会で殿堂入りを果たしたという名花です。

そのツル性を活かし、バラ園入り口の門扉に這わしたり、アーチにしたり、どのバラ園でもひときわ目立つ存在です。

レインリリー 花言葉とは 裏腹に

Rain Lily is beautiful in appearance, and flower language is also romantic such as “pure love”, but it is poisonous grass. Be aware that not only Rain Lily, but also beautiful flowers are occasionally poisonous grass contrary to their appearances.

綺麗な花ですね。レインリリーとは言いましたが、同じ仲間のタマスダレなんかも合わせてレインリリーということがあるので、こちらは特にゼフィランサスとも言います。

花言葉が、「清純な愛」とか「汚れなき愛」とか可憐で清い表現の言葉が多いですが、花も葉も全体にリコリンという有毒成分を持っています。もっと広い括りでは彼岸花の仲間で、彼岸花もそうですが、この仲間は有毒な花が多いですね。

「綺麗な薔薇には棘がある」とは花だけでなく、比喩的に美人には気をつけなさいよという警句としても使われますが、棘どころではありません。ごく身近なチュリップやスウィートピー、アネモネからアジサイ、ほとんどの花には毒があると言っても過言ではありません。

昔「トリカブト事件」というトリカブトを使った保険金詐欺に絡む殺人事件がありましたが、このトリカブトのように人を死に至らしめる毒を持つ花もあります。シュロソウなんかはアレクサンダー大王暗殺に使われたということで、歴史的にも有名な毒草です。

高山植物の中には触れただけで発疹が起こるような植物もあるから、綺麗からと言って安易に触れないことですね。

こんな事を思うと、私達が今食材にしている植物はもう何千年もかけて選り分けてきた植物で、その過程には多くの犠牲者があったことは容易に考えられることですね。ワサビやショウガ、ゴーヤーなんかは最初恐る恐る食べたんでしょう。有り難いことです。

また、これらの毒が逆に薬剤にも多く使われていることも付け加えとかねばなりません。

ヤブランが 木漏れ日返す イルミネーション

Yaburan, Liriope muscari, on the mountain path are blinking like a illumination by the sunlight falling through the trees.

寒い寒い。昨日は、今までの半袖姿から長袖に着替えました。出かけるときにはその上にフード・ジャケットを着たほどです。記憶では、10月の掛かりまで暑い日が続いたように思いますが。

お彼岸まで咲いていた彼岸花も一気にしぼみかけています。お店には、梨は早くから、蜜柑と柿が一斉に並び始めました。

山手を散歩していても、薄着では寒くてじっとしていられません。足早に歩いてやっと暖気を取り戻します。

そんな中、綺麗なヤブランを見つけました。木漏れ日で日が差したり、かくれたり、まるでイルミネーションのようです。しかし地味な花です。彼岸花とは全く対照的です。どちらが良いかは人の好みですが、ぼくは欲張りだからどちらも好きです。

ヤブランは目立たないけどよく見ると味わいがあり、芯が強そうです。一方、彼岸花は派手で艶やかですが、どこか野暮ったいところがあり、危うい美しさがあります。

どちらも近品種ですが、彼岸花の球根は毒があり、ヤブランの根球は食用になり、山で遭難したときには重宝します。彼岸花の球根も毒抜きをすれば百合根のような触感があり、美味しいものです。

ヤブランは漢方でも「大葉麦門冬」として知られていて、滋養強壮になるそうです。

植物も調べれば調べるほど奥深く面白い。人との関わりの深さもわかります。