清流に 触れて煌めく 実むらさき

Purple fruits of Murasakishikibu are glittering brightly by touching the clear stream. Only sound of babbling echoes around.

里山を奥に辿るともうそこは別天地です。せせらぎの音を頼りに近付いてみると清流のそばにムラサキシキブが赤紫の実をいっぱい付けて頭を垂れ、枝先が流れに触れて震えています。

ムラサキシキブといえばすぐ思い浮かべるのは紫式部。誰が名付けたのか。紫式部を思い浮かべて名付けたのか。いずれにしろぴったしイメージが重なります。

どういう思いで式部はあの長編小説を書いたのか。光源氏を取り巻く女性たちの運命に自らの儚さを写し描いたのか。

日が当たればキラキラと輝き、日が曇れば重く頭を垂れ、やがて実も朽ち果てて深い冬の帳に消えてゆくムラサキシキブ。

生きとし生けるものの運命がこの山里にも一年という歳月の中で巡っています。

キクイモを 見ると湧き出す インスリン

Flowers of Kikuimo have bloomed. They look just like chrysanthemum. The rhizomes contain ingredients effective for diabetes.

キクイモの花が咲きました。キク科の植物で花は菊そっくり。根茎はショウガのような芋ができるのでキクイモ(菊芋)となったんでしょう。

北米産の植物で江戸時代末期に日本に入ってきたというからもうかなり古い外来種です。当初は家畜の飼料として利用されていましたが、一部人の食用にも供されていましたが、戦時中には食糧に多く利用されたようです。そのうち糖尿病に効くことが知られるようになり、民間療法にも使われるようになりました。

糖尿病は、日本では戦後の食生活が欧米化によって急速に増え、今では1000万人を越える患者がいます。世界に至ってはその数は4億人を越え、20年後には7億人を越えるだろうと予測されるほどの勢いで増え続けていて、11月14日を世界糖尿病デーとして、糖尿病に対して注意を喚起しているほどです。

膵臓で作られたインスリンによって血液中の糖分が調整されていますが、糖分を取り過ぎたり、インスリンの量が少なかったりすると血糖量が増え、生活基礎エネルギーを超える糖分は脂肪に変えられて体内に保存されます。それが肥満の原因になり、内臓脂肪の原因になって、様々な病気を引き起こします。

キクイモにはイヌリンという物質が多く含まれていて、血液中の糖分を減らし、インスリンを補助する働きがあるため糖尿病には有効ということになるわけです。まだまだ認知度は少ないですが、今注目されている健康食品の一つです。

タマスダレ 囃子太鼓に そよと揺れ

White rain lilies blooming beside the road where the Danjiri pass by rapidly is swaying to the festival music.

タマスダレは夏の季語です。

真っ白い花が珠、細長い葉が簾に見立てて珠簾。暑い夏には実に涼しげで、いかにも夏にふさわしい植物です。

しかし、実際には9月から10月の上旬にかけて花は咲き続け、夏から秋にバトンタッチする花として俳句でもよく歌われています。

この頃のタマスダレはさすがにちょっとお疲れ気味で、花の色もあの夏の純白とは言えない色あせが見られます。

このところ、各地で残暑がまた記録破りの報道がありますが、タマスダレが咲く道をだんじりが勢いよく通り過ぎて行くミスマッチがまた面白い。

こうして段々と秋が深まって行くのだと思うと、だんじりの囃子太鼓とタマスダレが妙に結びつき、またまた盛者必衰の言葉が蘇ります。

 

だんじりの 地響き越える 鬨の声

Danjiru turns around the corner while roared the grounDanjiru turns around the corner while roared the ground. And when finishing to turn around it, great cheers of success go up more louder than the roar of the ground.d. And when finishing to turn around it, great cheers with success break out more.

岸和田のだんじり祭りは海側が九月祭礼、山側が十月祭礼と、二回にわたって行われます。

マスコミに取り上げられるのは九月祭礼の方で、この6日、7日に開催された十月祭礼はあまり知られていません。近隣の市町村でもこの時期に祭礼が多く、九月祭礼はその先陣を切るという意味からよく知られているのかもしれません。

日本の三大喧嘩祭りに数え上げられるほど荒っぽい祭りとして有名でしたが、今は女の子や子供も多く参加することから安全第一を基本に催されるので大きな事故も起こりません。

「やりまわし」と言って、通りの角を勢いをつけて回るのが最大の見せ場で、だんじりの屋根で団扇を持った棟梁方が跳ねながら指揮を執り、回り切った時にはだんじりを引く者も、周りの観衆も一斉に歓声を上げます。

だんじりは町内ごとに持っていて、一台3億円くらいそうですから町内の一大財産です。

町内ごとにある氏神さんに五穀豊穣の願いと感謝をささげるのが起こりで、町内の結束を深めるのに大きな役割を果たしています。田畑の耕作は一人の力ではできません。近隣の人たちの協力と水利の公平な利用によって収穫を得るわけですから、こうした祭礼は欠かせないものだったのです。

秋桜(あきざくら) 名前を返せと 狂い咲き

In Japanese, we write as ‘autumn cherry’ to say cosmos with kanji. So I am worried about the way how to express the real autumn cherry.

このところ涼しい日が続いていたのに、台風の影響で、全国各地で真夏日を記録する所が続出。それもあってか、桜の開花があちらこちらから聞こえてきます。

なるほど、四季桜といって春にも秋にも花開く桜はあることはありますが、本来春にしか咲かないはずの桜が咲くから狂い咲きといわれるわけで、ニュースに出てくるのもそういう桜なのでしょう。

その桜を見かけて作ったのが今回の句ですが、書き出しに「秋桜」と何も思わずに書いたのですが、よく考えてみたら「秋桜」と書けば普通にはコスモスを指すわけで、これは面白い、と書き直したのが上の句です。理屈っぽくて遊び半分の句ですから、果たしてこれが俳句になるのかどうか。

それでは秋に咲く桜を何と呼べばいいのか。「秋の桜」くらいが妥当ではないかと考えますが、これから秋の桜も常態化しないとも限らないわけですから、コスモスには悪いけれども、やはり秋に咲く桜は「秋桜」、コスモスはコスモス、もしくは「宇宙花」にしていただくしかないかなあ、とまことに今日は暇な話題になりました。

百合ひとつ 後ろ髪引く 野分きかな

In the forest where the typhoon is approaching, only one white lily is shaking in a helpless manner.

このところ毎週のように台風がやってくるような印象です。百合もぼつぼつ見かけなくなりましたが、散歩道の藪の中に立派な白百合が咲いていました。

百合も最近は種類も多く、色もとりどりです、近くの野山でよく見かけるのはオニユリ、テッポウユリ、そしてこのタカサゴユリです。テッポウユリとタカサゴユリは見分けがつかないほどよく似ていますが、タカサゴユリのほうが少し大きく、頭を垂れています。

オニユリは日本原産ですが、テッポウユリ、タカサゴユリは台湾や沖縄が原産で、ヨーロッパに持ち込まれ、それが日本に入ってきて野生化したという複雑な経緯があります。一時は絹に次ぐ輸出品で外貨稼ぎに貢献したとか。

白百合は色が白い百合をなんとなく白百合といいますが、一般的にはマドンナリリーを指し、古くから聖母マリアに捧げる花として教会花になっています。原産地もヨーロッパやコーカサス、パレスチナですから頷けるわけです。

台風が来てもどうか最後まで咲ききってほしいと願いました。

 

 

草むらに 瑠璃の宝石 ガラニチカ

A navy blue salvia-guaranitica like lapis lazuli of jewel is in bloom in the grass under the autumnal weather.

サルビアといえば夏中赤い花をいっぱいつけて咲くので、園芸にも公園にもどこにでも見かけるポピュラーな花です。この赤いサルビアは詳しくはサルビア・スプレンデンスで、サルビアには沢山の品種があります。

句中のガラニチカ(グアラニチカ)は正式にはサルビア・ガラニチカです。公園の片隅に咲いていましたから見せるたまに植えたものではないと思います。折からの秋晴れのもと宝石のラピスラズリにも負けないくらいの鮮やかな瑠璃色をしています。

毎回毎回思うことですが、植物はどうしてこんなに綺麗な色彩を作り出すんですかね。瑠璃色の瑠璃は宝石のことで、その同じ色のことを瑠璃色と言って、英語では瑠璃も瑠璃色もlapis lazuliなので上の英文では困りました。

ところで、このラピスラズリは人類が初めて使った宝石として、またパワーストーンとしても知られていて、エジプトのツタンカーメンの棺にはたくさん収められていますし、日本の正倉院の御物にはラピスラズリの顔料を使った宝飾類が多数収められています。

乗り越えて やっと実りの 稲穂かな

The rice plants that endured both the hot summer and the typhoon get down the heads and only wait for being harvested now.

朝早くから祭太鼓の音が聞こえてきます。6日、7日のだんじりのお囃子の練習です。全国どこでもこの時期秋祭りが繰り広げられますが、元は稲の無事収穫を感謝してのお祭りです。

今年も梅、桜の開花時期、梅雨入り、梅雨明けのずれ、集中豪雨、記録破りの高温、台風の巨大化と異常発生、どれをとっても想定を超える天変地異の連続でした。それでもなんとか耐えて、全国の稲作状況も指数102で「やや良」だそうですから、ありがたいことです。昔ならこうは行かなかったでしょうから、様々な面でやはり進歩、改善されてきているのでしょう。

古来、食においてはもちろん、税の基本に成ってきた日本では、今でも米の収穫状況はその年の国力を占う指標になっています。食生活も変わり、朝食はパンという家庭も多くなり、米の作付面積もどんどん減って、このままでは米の輸入国になるという危惧もありますが、美味しい米もどんどん増えています。

第三次安倍内閣が発足しましたが、日本の農業政策には今も確としたものがありません。工業立国、IT立国、観光立国も大切ですが、食糧安保をしっかりしたうえでの立国で、最近話題の廃棄食品問題なんかも含め、将来を見越した農業政策をしっかり確立してほしいものです。

いがぐりを 潮風撫でる 岬かな

In the cape where the typhoon has left, the sea breeze gently is stroking chestnuts covered with thorns in the former way.

ここ2日間は台風一過の秋晴れが広がったが、またまた台風25号が発生し、只今北上中とか。今回は日本本島は直撃を免れそうですが、沖縄は相変わらず通過地点に入っているようで、お気の毒なことです。

台風25号は「コンレイ」と命名されたそうですが、最近はあまり知られていないようですね。

我々の世代では「ジェーン」台風はあまりにも強烈だったので、おそらく誰でもが知っています。当時はまだ実質アメリカの支配地域だったので、アメリカの習慣で台風にも名前をつけました。「ジェーン」はもちろんアメリカ女性の名前。日本の「花子」さんみたいに馴染み深い名前なんですね。

アメリカではハリケーン何号と言わず、必ず名前をつけて区別するそうで、大概は女性の名前が付くようです。あのハリケーンや台風の凄まじさは、女性が一旦怒り出したら怖い怖い、その恐ろしさから連想したんでしょうね。女性はどこの国でも怖いんですよ。もっともその原因は大概男性が作り出すんですがね。

ということで、25号は「コンレイ」。カンボジアが命名国らしいです。名前の由来は、カンボジアのある少女の名前らしいです。ちなみに前回の24号は「チャーミー」。命名国はベトナム。名前の由来は、ベトナムの花の名前のようです。

このように台風にはそれぞれ名前がついていて、発生した国に命名権があるそうです。どの名前も魅力的で、あんなに怖い台風とは想像も付きません。

男性諸君、よく心することですね。

秋口の ハイビスカスは 色も澄み

It’s already autumn but hibiscuses are in bloom. It seems to be more vigorous than summer and its color is also vivid.

台風一過。澄み切った青空が空いっぱいに広がっています。拍子抜けの台風24合も予想したほどの被害も出さず何よりです。

また、本庶佑京大名誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞され、慶賀の至り。これで、1901年から始まったノーベル賞の日本人受賞者(日本国籍を持たない方も含め)は27人になります。

日本人初の受賞者である湯川秀樹氏は第2次世界大戦後であり、それ以前にも明らかにノーベル賞受賞に匹敵する業績を残した日本人は多く、おそらく50人は下らないと言われていますが、人種差別的偏見、言葉の問題、その他で受賞を逸してきました。

21世紀になってからは米国に次ぐ受賞者数ですが、さて、これからはどうなのか、ちょっと懸念する材料も多々あるようです。

さて、ハイビスカス。

ハイビスカスといえば熱帯性植物で、夏に咲くというイメージがありましたが、もう10月というのに、こんなに綺麗なハイビスカスが咲いていました。八重咲きでしかも黄色。

実は、ハイビスカスの花期は長く、春から秋までのようです。一つの花は一日か二日の寿命ですが、夏は次から次と花を付けるので、夏の花というイメージになっているようです。

しかし、ハイビスカスは高温には弱く、今年の夏にように記録破りの猛暑続きでは多分、相当参ったようで、だから、こんなに涼しくなった秋口に勢いよく咲いているのかもしれませんね。