尾瀬沼に 夢が走るや タムラソウ

Tamuraso is blooming beside the agricultural road where the rice planting is over. I remembered that the same flower had bloomed in Oze, which I used to visit in the past, and I feel a lump in my throat with nostalgic feeling.

梅雨の晴れ間、買い物に行った帰り道。田植えの終わった農道わきにタムラソウを見つけました。

ふと思い出したのは、昔尾瀬に行ったとき、ニッコウキスゲやハナショウブなど沢山咲く花に混じって、露に濡れたアザミが印象に残りました。もう咲き切って少しだらし気な姿に同情すら覚えたものです。

後でわかったのですが、これがアザミではなくタムラソウだったのです。アザミはきりりとした印象しかありませんが、タムラソウは寝乱れたような姿です。アザミとよく似ています。

今日で6月もおしまい。明日からは7月ですが、尾瀬もこのあたりから賑わい始め、ニッコウキスゲが満開の中旬ごろには銀座顔負けの人出でにぎわいます。そしてまた暑い暑い夏がやって来ます。期待と不安が入り混じった複雑な気持ちです。

雪山に 昴(すばる)を映す 崑崙花(コンロンカ )

Green leaves, white calyxes, small yellow flowers blooming among them, all of them look like the sky reflected in a snowy mountain. The flower’s name is Kunlun flower. It is a mysterious flower.

花の名前はコンロンカ(崑崙花)。花言葉は「神秘」。

白く見える葉は葉ではなく、花を守る萼(がく)で黄色いのが花。紫陽花も見ているのはほとんどが萼で花は中心にちょこんとあるだけです。先日取り上げた半夏生の白い部分は葉です。

熱帯性植物で日本では野生化しにくく、室内で育てる観賞用植物です。

名前の由来も、崑崙が原産地という意味ではなく、中国の奥地、タクラマカン砂漠の南に位置する崑崙山脈の崑崙を取ったもので、遥か異郷の地の植物という意味合いを込めたものと思われます。

崑崙山脈は全長3000㎞、日本列島の長さに匹敵し、月の直径が3500㎞ですから、いかに長大な山脈かが分かるわけです。標高も6000mを超える山々が連なっているわけですから、山頂は雪で白く、シルクロードを通って交易する商人にとっては神秘の山。

コンロンカの白い葉(萼)はその雪を連想させ、黄色い花はまさしく夜空に煌めく星を連想させたのでしょう。なんとも雄大で、ロマンチックで、神秘的な意味を込めた花なんでしょうね。

栴檀(せんだん)に 悲喜こもごもの 物語

Sendan flower was blooming in the nearby herb garden.  It is a sober flower but it has an aroma and many butterflies are flying around.  In summer cicadas will flock and in autumn it will be crowded with starlings.

台風一過、一昨日(6月26日)梅雨入りしたばかりですが、日本近海で発生した台風3号が通過し、今日は爽やかな晴れ間が広がっています。

この梅雨入りも新記録で、今までは6月25日が最も遅かったそうです。なんだか今年も記録破りの気象が続いていますが、ついでに明日行われる陸上競技の100mでも新記録を出してほしいものです。

今日からはG20大阪サミットが開かれるので、大阪市内は超厳戒態勢、恐ろしくて近付けません。

なんでも、動員される警察官は3万人で、かかる費用は75億円、とてつもない費用です。これだけの費用に見合ったというか、これを遥かに上回る効果を出してほしいものです。世界経済、環境、平和、効果が出なければ、サミット連中は「でくの坊」の集まりで、そのどんちゃん騒ぎにしかすぎません。

しかし、G20サミットによる経済の波及効果が大阪で250億円、近畿では350億円というから、これもどういう試算なのか、その通りなら地元は潤うというものです。

さて、栴檀。「栴檀は双葉より芳し」は先日もご紹介したように、この「栴檀」は「白檀」のことで、「白檀」は香木。「栴檀」は花は芳香がありますが、木には「白檀」ほどの香気はありません。

「栴檀は双葉より芳し」は、若い人には英語の「Genius displays itself even in childhood.」の方がよくわかると思います。

「栴檀」は万葉集や枕草子では親しみを込めて歌われていますが、壇ノ浦の戦いで敗れた平宗盛、清宗親子の晒し首を掛けたのも「栴檀」でした。

白檀の 梅雨の晴れ間の 大舞台

This is a cactus “Byakudan”. The original Byakudan, sandalwood, is an aromatic tree. It is used for Buddhist statues and tools, but it is also used in the framework of folding fans. The name of the cactus was taken from this precious sandalwood.

サボテンにはその容貌には似合わず、美しい花を咲かせるものが沢山あります。この『白檀』はその中でも最も美しい花のひとつです。日向を好まず、普通は屋内で風通しの良いところに置かれていましが、写真のように日当たりの良い石垣に自然に生えている白檀も、特に田舎では時々見受けます。屋内のものよりこちらの方が何倍も美しく元気です。

一つ一つの花は咲くのはたったの二日。一夜の命です。いったん咲き始めると次から次と咲き続けるので、見た目にはその儚さが分かりません。

本来の『白檀』はインド原産の香木で、その香の良さから仏像や仏具によく使われる貴重な木です。南米その他熱帯地方にもありますが、インド産のものが最も香りがよく、乱伐がたたって今では絶滅品種です。日本でも扇子の骨組みでおなじみですが、とても高価です。

サボテンの『白檀』はその高貴な木に因んで日本人が付けたのでしょう。中国では『白檀』は『栴檀(せんだん)』と言いますからね。

「栴檀は双葉より芳し」という諺が有りますが、この『栴檀』も実は『白檀』のことで、何が何だかまた頭がこんがらがっちゃいますね。ごめんなさい。

半夏生(ハンゲショウ) 回転寿司で 蛸を喰い

Eleven days after the day of the summer solstice is called the Hangesho day. Depending on the region, farmers have been in the habit of taking a five day break from the day after the rice planting is over. During this period, the farmers ate the eels and ate the octopuses to restore their energies.

夏至から数えて11日後を『半夏生(はんげしょう)』と言います。

伝統的な年中行事を行う季節の節目となる日を節句といい、人日(じんじつ、1月7日、七草の節句)、上巳(じょうし、3月3日、桃の節句、雛祭り)、端午(たんご、5月5日、菖蒲の節句)、七夕(しちせき、7月7日、たなばた)、重陽(ちょうよう、9月9日、菊の節句)の5節句あります。

半夏生は「雑節」といって、5節句の合間にあって、主に農作業の節目にした日を言います。今年は6月22日が夏至でしたから、11日後は7月3日です。

田植えも一段落し、地方によってはこの日から5日間は休息の日とするところがあったり、様々な行事も行われます。大阪ではいつの頃からか、この日は蛸を食べるという習慣があったり、福井では鰻を食べる習慣があったり、これからまた暑い日を乗り切るために鋭気を養うといった意味があったのでしょう。

俳句の「半夏生」は植物の「ハンゲショウ」をかけたわけですが、写真のように葉の半分が白く、「半化粧」にかけて「ハンゲショウ」と呼ぶ様になったのでしょう。梅雨の頃には長くて白い花が咲きます。

「ハンゲショウ」、「半化粧」、「半夏生」、なんだか理屈っぽくなりましたが、日本語の面白さが表れています。

大輪の 露草宿る 神於山(こうのやま)

Mt.Kounoyama is located in Kishiwada, Osaka.  It has been revered as a local “god’s mountain” since ancient times. An Oomurasakitsuyukusa is blooming on the mountain path.  It looks like a God’s incarnation.

大阪岸和田市の南東に神於山(こうのやま)という標高286mの山があります。

神於山は、古代から「神のおられる山」として、神様が地元の人々を見守る山として、別名「国見山」とも呼ばれ、神体山として山そのものが崇拝の対象となっていました。

水源の乏しい泉州では、神於山に源を発する春木川・天の川が稲作に利用できる唯一の流水であり、その水の源である神於山は、「命の水」を発するところとしても崇められてきました。

神於山を南に下ると神於寺という小さなお寺があり、いっときは泉州から紀州のあたりでは最大の勢力を張った根来寺とも張り合うほどの勢いがありましたが、根来寺にも抑えられ、信長や秀吉の焼き討ちにもあって、すっかりその勢力を失ったという歴史があります。

その山道を登っていたら、ツユクサの2倍も3倍もあるオオムラサキツユクサが朝露も晴らして凛として咲いています。まるで神於山に今も宿る神の化身でもあるかのような、神々しささえ漂う雰囲気です。

ヤマモモの 種ぷいぷいと 飛ばしっこ

I harvested a lot of Yamamomo.  I have just remembered that I would have competed with my friends for the distance of shooting a seed while eating Yamamomo under the tree when I was a kid.

夏至(6月22日)も過ぎ、また昼が短くなっていきます。しかし、これから梅雨、そして夏本番を迎えます。

近くの公園に植わっているヤマモモの木の下は一面落果で赤く染まっています。手の届くところは皆が食べたのかあまり残っていません。それでも木の裏側に回ると手の届くところにまだ残っています。口に入れると甘酸っぱい味がして、大きな種が残ります。

昔、子供のころ、友達とやはりヤマモモを取りに来て、種の飛ばしっこをしたことを思い出しました。なかなかうまく飛ばないもので、やっているうちに目が回ったほどです。

美味しい果物はたくさんありますが、こうしてヤマモモや野イチゴを見つけたらうれしいものです。

そういえば、長野県の野沢に行った折、宿の主人と山ブドウをたくさん取って帰り、山ブドウのジュースを作ったり、山ブドウ・ワインを仕込んだりしたことを思い出しました。

この夏もまたいい思い出が残る夏でありますように。

梅雨入りの 前に先まで 立葵

Tachiaoi begins to bloom from the beginning of the rainy season, and flowers come to the tip at the end of the rainy season.  However, since the rainy season has been delayed this year, flowers have already bloomed to the tip.

タチアオイは梅雨入り前に下の方から花を付け、梅雨明け時分には先端にまで花を咲かせます。別名ツユアオイとも呼ばれるゆえんです。

大阪はまだ梅雨入りしていません。今までで一番遅い梅雨入りが1958年の6月25日ですから、明後日までに梅雨入りしなければ記録破りの遅さになるわけです。

街路脇に真っすぐ立っているタチアオイはもう先まで花を付けていました。待ちきれずにどんどん花を咲かせたのでしょう。この分では梅雨明け時分には枯れてしまわないかと気を揉みますが、タチアオイは花期が長く夏の終わりくらいまで咲きますから、取り越し苦労というわけです。

タチアオイは薬草としても洋の東西を問わず昔から知られていて、日本でも最初は薬草として中国から渡ってきました。ヨーロッパではハーブティとして今でもよく使われるそうです

花は大きく、夏の花としてハイビスカスとよく比較されますが、タチアオイはやはり東洋の花、あたりの風景にもよく和みます。

梅雨に濡れ 祈る大師に 生身供(しょうじんく)

Japan’s Greatest Monk, Kukai is still alive after 1200 years.  This morning, too, three monks are carrying it while getting wet by tsuyu in order to deliver breakfast to the great monk.

高野山奥の院の突き当りに弘法大師空海の御廟があります。空海は入定(にゅうじょう、死)の一年前にここに廟所を定め、予告通り翌年の835年3月21日に永遠の瞑想に入りました。その時以来、空海は今もなお御廟で世界平和と人々の幸福を願い瞑想を続けています。

「生身供」は空海入定以来1200年を経た今日まで、1日2回、瞑想を続ける大師に食事を届ける大切な行事になっています。

仏教はおよそ500年前後に伝わり、聖徳太子が『三経義疏』、法華、勝鬘、維摩を著して日本に広まりましたが、あくまでも輸入仏教で、日本に日本仏教としての礎を築いたのが、弘法大師空海であり、伝教大師最澄です。

空海の教えは真言宗として、最澄の教えは天台宗として広まります。そして真言宗は京都から遠く離れた高野山に金剛峯寺、天台宗は京都を見下ろす比叡山に延暦寺に本拠地を置きます。

天台宗は時の権力との結びつきも深く、後には織田信長によって末寺まで含めてことごとく焼き討ちに会う運命を辿りますが、真言宗は信長自身が高野山に墓所を持つほどの信仰心を持っていました。

最澄も空海には一目置いていたようで、空海に教えを請うたと伝えられています。

山百合の 孤高を知るや 峠道

As I was walking along the mountain path, I met Yama Yuri which bloomed wonderfully. I completely forgot my fatigue and was deeply moved by the nobleness that keeps the loneliness of the lily.

ユリも他の花の例にもれず、ますますハイブリッド化されてきています。

ハイブリッドという言葉も元はこうした植物の交配、品種改良を意味しますが、今ではハイブリッドカーと言ってガソリンと電気を組み合わせたエンジンを搭載した自動車の方で有名になっています。

この前にもご紹介したカサブランカも典型的なハイブリッドの花で、花屋さんで見かけるユリもほとんどがハイブリッドの花です。

ヤマユリやテッポウユリ、ササユリなどは日本原産のユリで、カサブランカの原種である今や絶滅したタモトユリもそうです。

中でもこのヤマユリは美しさもさることながら威風堂々とした姿は「百合の王様」と言われるほどで、人も入らないような山の中にも咲いていて、孤高を保つ気高さではいちばんだと思います。